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今日もいい日

不定期更新な日記だったり定期更新ゲーム『False Island』の日記だったり。 気分次第で更新、今日もいい日。

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Blackwind's Police Blotter 6-1 -Wall & Spear-

「はふうー」
「どうした、随分と疲れているようだな」
ガートルードが机に突っ伏している。その様は、ぐったりという言葉がぴったりだった。
勧められたコーヒーにも手をつけず、覇気がない。一緒についてきたテレーズも、少し困り顔だ。
所はオーベルの館の応接室、二人の突然の来訪ではあったがオーベルは快く部屋を貸してくれた。
世話を任されたシャーリーはアンネローゼの後ろに控えている。
「うーん、まあ確かに少し疲れちゃいるかな。最近仕事が大変でさあ」
「最近というと……やはり例の『怪盗』ですか?」
「そう!」
ガバッ!と身を起こす。その勢いに、シャーリーが一瞬身をすくませた。



「もうたまんないよ。あいつらホントに手加減しないんだ……今月に入ってもう七件もやられてるんだよ」
「七件?つい先日までは六件だったはずでは?」
「ところが昨夜、七件目が出てしまったの。被害に遭ったのは第二区の富豪で、それはもう鮮やかなものだったそうよ」
「ふむ……確か『赤髭』と『白姫』だったか?」
ガートルードがうなずきながら同意する。
「うん、その二人。やってくれるよ、まったく……」
『怪盗』。ここ数ヶ月、皇都ワールッツに跋扈する連続窃盗犯である。
デーツに伝わる伝説を元にした名を名乗る、神出鬼没の仮面の二人組――『バルバロッサ』と『ブリュンヒルト』。
『赤髭』と『白姫』はそれぞれの通称だ。
いかに厳重な警備も突破して忍び込み、十重二十重の包囲も掻い潜って姿を消す。
良くない噂のある豪商や貴族を狙い、その財や不正の証拠を盗み出す、いわば義賊である。
人を殺傷することは一切なく、目的はあくまで盗みという一種の高潔さも持ち合わせており、盗んだ金は全て福祉基金に送られてくるという。
当然、市民からの評判はすこぶる良い。が、それでは済まないのがガートルードの所属する皇都警備隊だ。
義賊とはいえ盗人は盗人、捕らえなければメンツが立たない。
それを捕らえられないがゆえに疲れているのだ。
「昨夜はかなりうまく回り込んで行き止まりに追い込んだんだけど、屋根を越えられちゃこっちもねえ……」
「何、屋根を?」
「やはり……二人の正体は獣人のようね」
テレーズが冷静に言を打つ。聞き慣れない単語が混じっていたが……
「シュツルム殿はご存知ないと思いますが、デーツには人ではない種族も住んでおります。それが獣人――高い身体能力と、外見上の若干の違いを持っています」
「ほう……そんな連中がいたとはな」
「高いって言っても、そんなにバカみたいに高いわけじゃないんだ。昨夜だって、屋根を越えたって言っても壁を蹴り上がっていったわけだし……」
「能力も外見も、普段は人間と変わりはありません。潜在的な身体能力を引き出した時に、外見も変化するのです」
「そこまで分かっているのなら、その獣人とやらを中心に捜査すれば見つかるのではないか?」
手がかりがあるならそこを突いていけばいいはずだ。しかしガートルードは力なく首を振った。
「獣人は絶対数が少ないんだ。ワールッツ都民六十万近くのうち、獣人は多分千人もいない」
「少なければ探しやすい、というものでもございませんわ。獣人だからといって、申し出たり登録したりする義務はありませんから」
「なるほど、誰が獣人か分からないということか。これは骨だな」
再びガートルードが机に突っ伏した。
「いつ出るか分かんないし、どう追い詰めても必ず逃げられるし……『絶対に捕まえろ』なんて、副長も無茶言ってくれるよ」
「仕方ないわ。それが貴女たちのお仕事でしょう?」
「そりゃそうだけどさ……総隊長はいいとして、鬼の副長様がとにかく大変でさ」
「ほう、警備隊の総隊長と副長か。その二人、興味があるな……もう少し詳しく教えてくれぬか?」
シャーリーに新しいコーヒーを淹れてもらう。最近ではシャーリーも俺の好みをよく分かっており、しっかりとした甘さの一杯を作ってくれる。
「皇都警備隊は全部で十二隊あるのは知ってるよな?で、それぞれの担当区域がある。けどそれに縛られない隊が、十二隊の他に一隊だけあるんだ」
「全隊と共同で任務にあたり、命令系統では上位に。貴族に対する捜査権も持つ、皇都警備隊の特務部隊です」
「そこの隊長が皇都警備隊の副長、グリューネワルト・フォン・ミューズ候。さらに全隊を指揮するのがヒルデガルド・フォン・マリンディア総隊長ってわけ」
「二人とも女性なのか?」
「性別も年齢もデーツでは階級に関係いたしませんわ。能力のある者が能力を振るえる立場に就くのが、建国以来の伝統ですから」
いいことだ。世界には無意味な縛りで能力を発揮できない者が多くいる。
実力主義が良い方に転がった好例と言えるだろう。
「まあ、あの若さで総隊長に副長なんだから確かに腕は立つし頭も切れるよ。けどなあ……」
「ガートルードは平隊士だろう。そんな上の者と直接話す機会があるのか?」
「あたしは、その……色々と問題児らしいから、呼び出し喰らうことがあって」
「『らしい』ではないでしょう。先日も捜査中の器物損壊で始末書を書かされていたではありませんか?」
「うー……ま、まあそれはそれとして」
バツの悪そうな顔になったが、ごまかすように話を再開するガートルード。どうやら上の覚えはめでたいようだ。
「副長がとにかく大変なんだよ。もう厳しいの何の……毎月の定例査察なんか、みんな戦々恐々だよ。どんなに小さい不備だって突っ込んでくるし、しかも説教が始まったら長い長い。あれは呼吸する規則だね」
その時、部屋の扉を叩く音がした。アンネローゼの首肯を得てシャーリーが扉を開けると、そこに立っていたのはアルマだった。
「どうした?何か用か」
俺の部屋付きのアルマが来るということは、俺に用があるのか。しかしアルマの答えは否だった。
「いえ、私はどなたにも御用はございません。ですが、お客様が」
そう言って一歩引いたアルマに代わり、二人の人物――どちらも鎧を身に着けた女性騎士だ――が部屋に入ってきた。
「うえっ!?」
「何だいガートルード、その反応は。傷つくなあ」
にこやかに笑っている騎士。柔らかそうな金色の短い巻き毛と、あどけない顔立ちはまるで少年のようだ。
「……」
今一人の騎士は無言の仏頂面である。少しクセのある、凪の海のような群青の髪を無造作に腰まで垂らし、同じ色の瞳が縁のない眼鏡の向こうからこちらを睨んでいる。
「そちらの御仁とは初対面だね。私はヒルデガルド・フォン・マリンディア。皇都警備隊の総隊長をやってるんだ」
小さい喫茶店をやってるんだ、とでも言うような簡単な口調である。驕ったところもなく、謙遜する風でもない……なかなか面白い。
「シュツルムだ。ここで居候をやっている」
「ああ、あなたが……噂は色々聞いてるよ?」
悪戯っぽく笑うと、もう一人の騎士に挨拶するよう促した。
「グリューネワルト・フォン・ミューズ。皇都警備隊副長、並びに特務部隊隊長の任に就いている」
こちらは実に対照的な、質実剛健といった口調だ。アンネローゼが立ち上がり、二人に声をかけた。
「お久し振りです。わざわざお越しになるとは、何事でしょうか?」
「やあアンネローゼ、元気そうだね。実は今度の皇都夏祝祭(おうとかしゅくさい)の事でマイザー候に相談があってね」
「そうでしたか……して、こちらには何故?」
「うーん、寄り道するつもりはなかったんだけどね。ここの前を通りかかったら、何だか我々の名前が耳に入ってねえ……」
意地の悪い微笑みを浮かべてガートルードを見やる。本人は二人が部屋に入ってきた時に叫んだきり、真っ青のまま固まっている。
「あらあら……お二人は、どのあたりからお聞きになったのでしょう?」
「『総隊長はいいとして』のあたりかな」
要は最初からだ。グリューネワルトが剃刀の刃を思わせる鋭い視線をぶつけながら口を開いた。
「ビットフェルト。理論的、且つ的確な進言であれば、階級の別なく我らは受け入れるだろう。しかし……」
目が細められる。剃刀の輝きが増した……うむ。
これは正直、俺でも怖い。
「先ほどの貴公の発言は、不当に私を貶めているように聞こえた。皇都警備隊隊則第八条一項を暗唱せよ」
「はっ……はち、じょう……」
ガートルードは完全に混乱している。
「……『敬意・礼節をもって相対すべし。思うところあればこれを当人に訴えるべし』だ。貴公はこれに違反しただけでなく、隊則さえ暗記していないとみえる。ただで済むと思うな」
「ひっ……」
半泣きで震えている。狼に詰め寄られたウサギのようだ。助かるかどうかは分からんが、船を出してやるとしよう。
「待たれよ、ミューズ候」
グリューネワルトの言、間違ってはいないが些か強すぎる。
「確かにガートルードに非はあろう。しかし下の者が上役の愚痴を言うのも世の常」
視線がこちらに飛んできた……おかしい。強烈ではあるが、ガートルードに向けていたそれとは何か違うように思える。
「違反の現場を抑えておきながら、それを見逃せと仰るか?」
「上役の器量というのはこういう場面でも試されるものであろう……寛大な措置を望む」
数秒、視線が交錯する。アンネローゼとテレーズは俺たちを交互に見やり、口を挟めずにいる。ヒルデガルドはヒルデガルドで、事態がどう転がるか興味津々といった顔だ。
「……良かろう。この場は貴殿の顔を立てるとしよう……命拾いしたな、ビットフェルト」
「は、はい……」
「ご厚恩、痛み入る」
「面を上げられよ。私こそ、場を騒がせて申し訳なかった……では、失礼する」
教本に載っていそうな見事なお辞儀をして、グリューネワルトは部屋を出て行った。
「ふふふ……私が止めるつもりだったけど、貴殿なかなか骨があるね。どう?警備隊で働いてみる気はない?」
ヒルデガルドは何とも緊張感のないことを言っている。今の凍りつきそうだった空気を、感じていたのかいなかったのか。
「申し出は有難いが、今の所はその気はない」
「そっか。残念だな……まあ、次回は色よい返事を期待してるよ。じゃ、またねー」
ひらひらと手を振りながら、アルマを伴って部屋を出て行った。空気に呑まれ、こちらも半泣きのシャーリーが静かに扉を閉めると、ガートルードがへなへなと机に倒れこんだ。
「うう……怖かった……」
「まったくだ。久々に冷たい汗を感じたぞ……あの威圧感は並大抵のものではない。相当の修羅場を潜っているのではないか?」
「四年前、皇都が魔物の大群に襲撃される事件がありましたわ。当時、ミューズ候は弱冠二十三歳で警備隊七番隊の隊長。マリンディア候は二十二歳で一番隊の隊長」
「総隊長と副長が早い段階で重傷を負ってしまい、代わって防衛戦の指揮を執られたのがミューズ候です。警備隊の四倍近い数の魔物を一歩も皇都に入れさせず、ついた異名が『絶対氷壁』」
砕けることなき氷の壁か。うまいことを言う。
「マリンディア候は防衛指揮はミューズ候に預けて、一番隊を連れて一気に群れの親玉を叩いたんだ。まあ凄かったね、あの時の一番隊の士気の高さは。誰一人、足なんか止めやしない……『戦神の槍』が指揮してるんだから当然だけど」
「その時の攻守における功をもって、お二方は今の地位に昇格されたのです。年が若すぎるということで、一年間は暫定措置でしたが」
「ミューズ候の武器は冷静な判断力と鋭い剣技。マリンディア候も隊士からの信篤く、槍術の技量は国内でも屈指と言われておりますわ。それに、ガートルードの……」
「わわわ!テレーズ、言うなって!」
突然名を出され、あたふたと慌てるガートルード。頬が赤いが、何事だ?
「別におかしなことではないわよ?うふふ、シュツルム殿。実はガートルードが斧槍を使ってるのは、マリンディア候に憧れてですのよ」
「ほう……」
「うー……言うなって言ったのに……」
「恥ずかしがることではない。憧れというのはいいものだ……憧れを持っている自分を誇りに思え」
「そ、そうかな?えへへ……」
羨ましいことだ。人に憧れるなど、もう随分とない。
「四年前、あたしはまだ隊士養成校の生徒でさ。戦闘には参加してないんだけど、カッコよかったなあ、マリンディア候……」
「さぞ鮮やかな戦いぶりだったのだろうな」
「そりゃあね。城壁の上から見てたけど、あの槍捌きにも飾らない人柄にも憧れたよ……勇ましく先頭切って突撃してく姿が凛々しくて、でもケガした隊士たちを誰よりも気遣ってて」
ガートルードの目が、しばし過去を懐かしむ光を帯びた。表情も穏やかで嬉しそうだ。
「あたしたち生徒は救護施設で手当ての手伝いぐらいしか出来なかったけど、その時に声をかけられたんだ。『ありがとう。君たちが後ろにいてくれるから、私たちは戦えるんだよ』って。あの時、『この人に近付きたい』って思った。それからだね、あたしが斧槍を使うようになったのは」
「後ろでではなく共に戦う道を選んだのか」
「うん。やっぱ、あたしは体動かしてる方が性に合ってるし。あたしのやり方で、あの人に近付こうって」
「いいことだわ。目標があるというのは、人が成長できる要素の一つだもの」
「……」
アンネローゼは、シャーリーの注いだコーヒーを静かに飲んでいる。そういえば、アンネローゼには誰か憧れる人物はいるのだろうか?
「アンネローゼはどうだ?」
「私は……強いて言うならば、ミューズ候を目標としています」
「ええっ!勘弁してよ、あたしの親友があんな鬼になるの嫌だよ」
また悪口を言っている。さっきの騒ぎをもう忘れたのか……少しは反省をしろ。
「言動はまた別の話です。ミューズ候は、自らが法の護り手であることに誇りと強い責任感を持っておられます。それだけ何かを信じられる強さに憧れているということです」
「確かに、ミューズ候の厳しさは裏返せば責任感だわ。自分にも他人にも厳しい、その厳しさを支えているのは信念だもの」
「そう思います。あの強い心は大きな目標です。しかし……」
一瞬、アンネローゼがこちらを見たような気がした。気のせいだろうか?
「……いえ、何でもありません」
周りにいた四人の顔に疑問符が浮いたが、特に誰もそれ以上の追及はしなかった。
ちなみにシャーリーは、アルマのような何でもこなすメイドになることが目標らしい。
見習う相手を間違えていないことを、願わずにはおれなかった。

テーマ:栗鼠ゲーム - ジャンル:オンラインゲーム

  1. 2008/09/13(土) 20:02:40|
  2. 偽島の裏
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