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今日もいい日

不定期更新な日記だったり定期更新ゲーム『False Island』の日記だったり。 気分次第で更新、今日もいい日。

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Butler on my way

翌日の早朝。
私の部屋の扉を叩く音で眼が覚めた。
時計を見れば、ようやく日が昇り始めたかという時間だ。
音の落ち着きようから察するに緊急事態の類ではないだろう。
では、誰が何の用で?
「……こんな早くから、誰ですか?」
声に張りがない、と自分でも分かっている。
恥ずかしいことだが、どうしても朝は弱い。睡眠時間をどれだけ長くとっても、寝起きは頭がふらつくのだ。
「俺だ。部屋に入れてもらいたい」
……この声は……



「……まさかシュツルム殿ですか?」
「そうだ」
一瞬で目が覚めた。
「す、少し!少しだけお待ちください!」
着替えなければ。寝間着のままでのこのこと出て行くなど、断じて許されない。
何に対して許されないのかは分からないが、とにかくシュツルム殿の前でみっともない格好は晒せないのだ。
さすがにいつもの鎧を着ける暇はなかったが、どうにか部屋着には着替えられた。
寝間着は……ベッドに放り込んで掛け布団で隠す。普段ではあり得ない行動だが、今は緊急事態だ。
ざっと部屋を見回して、乱れている箇所がないかどうかもう一度確認する。
机の上に活けた花も元気に咲いている。
大丈夫だ……何が大丈夫なのだろう?
私は何をこんなに焦っているのだろう?
沸き起こった疑念を、今はそれどころではないと打ち払った。
深呼吸を一つして、扉を開ける。
「一体、どう……!」
「詳しいことは中で話す」
一瞬、呼吸が止まったかと思った。寝起きにも関わらず、胸の鼓動が途轍もなく早まっている。
「…………」
部屋に入ってきたシュツルム殿をまじまじと見る。
「昨日のカードでオーベルに負けたわけだが、その代償がこれでな」
上下揃いの黒の礼服。長めのジャケットの下はベストと、襟の立った真っ白いシャツ。黒い蝶ネクタイに白い手袋。
磨き上げられて艶々と光る革靴に、片眼鏡まではめている。
その内の幾つかは恐らく特注品だろう。シュツルム殿の体格に合うような服は入手自体が難しい。
しかし……よくお似合いだと思う。
普段の服装と余りにもかけ離れているせいか、受ける印象がまるで違う。
「……その服装が代償ですか?」
ともすれば上ずりそうな声を何とか抑えて質問する。
「いや、これはただの衣装だ。実際の内容はもっとオーベル好みで、向こうの要求を一つ呑むことだ」
これがただの衣装ということは、これを用いた何かがオーベル様の要求なのだろう。
しかしこの服装は……!
「……まさか」
「そのまさかだ。今日一日、オーベルの客分ではなく――」
実にとんでもない事態だ。
「アンネローゼ・ニーダマイヤーの執事を務めることに相成った。よろしく頼む、主」

早足で歩く私に二歩遅れて、シュツルム殿がついてくる。
「とにかく、このようなふざけたことは即刻止めていただきます」
「そうは言うが、オーベルが止めると思うか?我が主」
「その呼び方もお止めください!」
私は騎士ですらない一介の剣士。主などと、とんでもないことだ。
そう呼ばれる度に顔が熱くなってしまう。
平常心を保たねばならない。そう思いながら玄関ホールまで来たところで、シャーリーと顔を合わせた。
「あ、アンネローゼ様。おはようございます!……え、と……シュツルム様……?」
きょとんとした顔でシュツルム殿を見ている。当たり前だ。
「うむ、おはよう。服に関しては気にするな」
頭を撫でられている。恐らくシュツルム殿からすれば無意識の行動だろう。
シャーリーにはどこか小動物的な愛らしさがあり、彼女の頭を撫でるのはある種の挨拶のようなものでもあるのだ。
「あ……」
猫ならゴロゴロと喉を鳴らしていそうな顔になった。
「おはよう、シャーリー。早速だけど、私はオーベル様のお部屋に行くところなの。今日は朝のコーヒーはいいわ」
「え……?アンネローゼ様『も』ですか?」
『も』。
「まさか、オーベル様に呼ばれているの?」
「はい、昨夜。『明日の朝、大事な話があるから部屋に来るように』と」
一体何だろう。シャーリーは私の部屋付きで、オーベル様から呼出しを受けることはまずないはずだ。
私に用事ならば直接私を呼ばれるだろう。
しかも何故こんな時間に?
「ここでこうしていても仕方あるまい。参ろう、主」
「主?」
「シャーリー、そこには触れないで」
確かに、今考え込んでも答えは掴めそうにない。
であれば、まずは動くことだ。
再びオーベル様の部屋を目指して歩き出した。

部屋の中にいたオーベル様は、シュツルム殿を見るなり喜色満面になった。
「うーん、思った通りですね。いや思った以上によく似合いますよシュツルム」
「素直に礼を言う気にはなれんな」
「オーベル様。悪ふざけにも程々になさってください」
いつもより語気が強まっているのが自分でも分かった。
「シュツルム殿は客人というお立場のはず。その客人を、部下である私のさらに下につけるとはどういうおつもりですか?」
「なに、ちょっとした遊びだよ。賭けの代償としてはキツすぎず優しすぎず、いい塩梅だと思うけど」
「遊びにしては度が過ぎましょう。そもそも……」
「まあ、待ってよアンネローゼ。実は、皇都でシュツルムが少し噂になってるんだけど知ってるかな?」
シュツルム殿が?それは聞いたことがない。案の定、シュツルム殿もシャーリーも知らないようだ。
「マイザー候の屋敷にいるシュツルムという男は、とにかく自分の思うがままに動く。暴れるわけではないが、一度動けば留めようがない。まるで翼の生えた虎のようだ、とね」
「……初耳です。そのような噂は聞いたことがございません」
「似たようなものが他にも幾つかあるんだよ。言わんとするところはどれも同じで、シュツルムがとにかく自由人だと言うことなんだが……さて、アンネローゼ。君の今日の任務は、僕の名代として皇都の各所へ出向いてもらうことだったね」
「はい。午前中に三件、午後に四件。夜はオーベル様の護衛として、ベストパル候の館に」
「その通り。で、皇都を巡るアンネローゼがシュツルムを従えていたら、街の人々はどう思うだろうね?シャーリー」
「ええと……アンネローゼ様はすごい、と思うのではないでしょうか?」
「うん、きっとそうだろうね。音に聞こえた自由人をも従えるアンネローゼ。名声の一つになるだろう」
「そのように上手く事が運ぶとは思えませんが……」
「ということは!」
私の反論は封殺されたらしい。
「当然、そのアンネローゼを配下に持つ僕は、より安全になるわけだ。オーベルを狙うには『あの』アンネローゼが厄介だ、とね。どうだい、ひいては僕の護衛という君の任務の助けにもなるんだよ」
「ですが、結局は今日一日のこと。明日以降、シュツルム殿が元通りであれば意味がないのでは?」
「そこは簡単、『アンネローゼが許した』ということにすればいい。尚のこと評判が上がるだろう」
確かに筋は通っている。が、昨日まで私はシュツルム殿をご案内する立場だったのだ。
急にそれを逆転させると言われても、おとなしく受け入れるのは難しい。
「確かに客人ではあるけどシュツルム本人も同意してくれてるんだ。道義的にも問題はないと思うけどねえ」
「ですが……」
「それともシュツルムが一日くっついて世話を焼いてくれるのは嫌なのかい?彼が嫌いとか?」
「そ、そういうことではありません!」
確かにもう少し行動を自重してほしいとは思うが、だからと言って嫌いなどととんでもないことだ。
大体シュツルム殿は本当に納得しているのだろうか?いくら賭けに負けたとは言え、しかも今日一日だけとは言え私のような小娘の執事とは。
しかししばらく無言だったシュツルム殿は、私に引導を渡すかのようなことを言い出した。
「諦めろ、我が主。それにシャーリーも用件を待っている」
「あ、そうだったね。ええとねシャーリー、シュツルムがアンネローゼの執事をやることになったから、突然だけど今日は半休ということでいいかな?」
「お休み……ですか?」
「うん。あ、半休だから済まないけど夕方には戻っておくれ。頼みたいことがあるんだ」
「……分かりました、旦那様。アンネローゼ様のお部屋を整えてから、お休みをいただきます」
「素直でよろしい。急な話でしかも半日だけだが、これで皇都にでも行っておいで」
幾らかの小遣いを渡されたシャーリーは、困ったような表情を浮かべている。
「旦那様、私もお給金を頂いている身ですから、こういったことは……」
「ああ、そうだね……ではこうしよう。僕の使ってる万年筆のインクが切れてしまったから、それを買ってきておくれ。お釣りはお駄賃にして構わない。値段が変わってるかもしれないから、色んな店を回って確かめてから買うんだよ?」
「シャーリー、頂いておきなさい。オーベル様のお心よ」
「……はい、アンネローゼ様。旦那様、ありがとうございます。では失礼します」
理由が付いたことで納得したのだろう、嬉しそうな顔でシャーリーは出て行った。
それを見送って、思わず深い溜息をつく。
「シャーリーの休みを認めてしまった以上、私も諦める他はございません。シュツルム殿、朝食の後すぐに出発いたしますので、お支度を」
「アンネローゼ、シュツルムは執事だよ?そんな言葉遣いは主らしくないなあ」
「オーベルの言うとおりだ。俺の方は気にせんぞ」
そんな事を言われても困る。困るが、やらざるを得ない。
「……シュ……」
シュツルム。そう呼ぶのは嬉しくもあり、一方で怖くもある。
私ごときがそのように親しげに呼んで、本当にいいのだろうか?
「ん?」
ダメだ。時間を稼がなければ。
「……出発までに、何とかいたします!」
それだけ言って、私は逃げるように部屋を飛び出した。
耳まで赤くなっているのは、自分でもよく分かっていた。

テーマ:栗鼠ゲーム - ジャンル:オンラインゲーム

  1. 2008/05/15(木) 18:15:51|
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False IslandのE.No412 Blackwind。
中の人はヘビーメタルと刀を愛する超甘党。

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