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今日もいい日

不定期更新な日記だったり定期更新ゲーム『False Island』の日記だったり。 気分次第で更新、今日もいい日。

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I wanna peace

「アンネローゼ様、お手紙が届きました」
シャーリーが銀の盆に乗せて手紙を運んでくる。
「ありがとう。こっちに置いてちょうだい」
少しずれていた眼鏡を直し、机の向こうからちらりと目をやる。
複数の大きな封筒と、その間から申し訳程度に顔を出している普通の封筒だった。



館に届く郵便物はまず二種類に分けられる。
メイドを始めとする使用人宛てのものと、主であるオーベル様宛てのものだ。
使用人宛ての手紙は受け取った者がそれぞれ手渡しをするが、オーベル様宛てのものは全て私のところに来る。
以前は直接オーベル様にお渡ししていたが、ここ数ヶ月で状況は大分変わった。
私の所属は今もってオーベル様の護衛騎士団であり、対外的にはそこに勤める剣士の一人だ。
が、実情は大分異なり、半分はオーベル様の秘書のような役割をしている。
発端はシュツルム殿との邂逅と言っていいだろう。
森の中で狼たちと戦い手傷を負った私は、治療を兼ねてシュツルム殿の案内役という任を仰せつかった。
通常の護衛任務を外れて行動する中で、護衛以外の部分でオーベル様を見る機会を得た。
基本的に私たちの任務はオーベル様の外出時の警護だが、逆を言えば館にいる場合は殆ど接触がない。
外出の予定は大体決まっており、それに該当しない日は館の警備や鍛錬が任務となる。
シュツルム殿の案内役となってからは、館内でオーベル様と接することが増えた。シュツルム殿の語る異国の話をオーベル様が好まれたからだ。
その中で初めて分かったことだが、(主に対する無礼は承知の上だが)オーベル様の私生活はお世辞にも真面目とは言い難かった。
仕事はきちんとこなしている。複数の『院』の業務を掛け持ち、結果だけを見ればそのどれもが文句のつけようがない。
が、他の部分の管理が甘すぎる。こなした仕事が期日に間に合わないことが多すぎるのだ。
催促の手紙を読んで渋い顔をするオーベル様をよく見たし、『院』の職員がもう待てぬと直接館に押しかけてくることも珍しくなかった。
見るに見かねて、僭越とは思いながらもさりげなく予定や期日をお伝えするようにしたのだが、喜んだオーベル様から逆にそれらの管理を任されてしまった。
護衛任務は従来どおりで、かつ秘書としての役割を命じられたのだ。
団長とオーベル様の間で話し合いがもたれ、それ以後私の待遇も変わった。自室を与えられ、見習いではあったが部屋付きのメイドとしてシャーリーまで。
他の団員との待遇差が軋轢を生んではいけないと思い反対したが、意外にも団員たちはあっさりとそれを了承した。
『まあ、オーベル様の秘書ってだけで個室がもらえるんなら納得できなかったけどな』
『今のアンネローゼは、詰め所にいたら仕事にならないものね』
『あの人に振り回されるぐらいなら、俺は大部屋のままで結構だよ』
『同感ね。よく耐えられると思うわ……』
そう。館に逗留するようになってから半月も経たないうちに、シュツルム殿の余りにも無制限な行動は騎士団内に知れ渡っていた。
深夜に館内を歩き回っているところを見つけ、理由を問い詰めれば『満月が一番よく見える部屋を探していた』。
日が昇っても帰らぬことにやきもきしていれば、ふらっと戻ってきて『朝焼けに誘われて散歩していた』。
挙げていけばきりがないが、とにかく本当に好き勝手なのだ。案内役の手前、ついていける時は可能な限りついていくようにしていた。
そのうちに単独行動ばかりとらされるようになり、団長の配慮で私は独自の勤務予定を作ることになった。
彼の行動についていくには、そこまでしなくてはいけないのだと誰もが理解していた。
それもこれも、全てはシュツルム殿のせい。日々振り回される私を見て、団員たちは時に慰めの言葉を、時に励ましの言葉をくれる。
さらに恐ろしいことに、オーベル様はその行状をご存知の上で楽しんでおられる。
一度、シュツルム殿にご自重いただくようにお口添えをいただきたいと進言したことがあったのだが、
『いいじゃないか。それとも一日部屋に閉じこもってブツブツ言ってる相手の方がいいのかい?』
話にならなかった。
それどころか最近ではシュツルム殿と連れ立って無茶をしでかすようにさえなってしまわれた。
先日など屋根の上で二人して酒を飲んでおり、しかもシュツルム殿は命綱さえつけておらず、心を鬼にして二人を正座させた。
ところが人というのは分からない。シュツルム殿はまだしも、オーベル様は私のその態度がいたくお気に召したらしい。
『今後、私が無茶をしたら遠慮なく叱っておくれ』と言われてしまった。
以前から突拍子もない行動をとられることはあったが、シュツルム殿が来てからはまるで水を得た魚。
最早私一人の手には負えないと、非番の団員たちに頼んで網を張ってもらってはいるが、それでも止められるかどうかは五分。
オーベル様はまだ仕事がある分止めやすいが、シュツルム殿はそういった制約がないので困る。
張られた網を破り掻い潜り、こちらの警備を試すかのように突破していく。
もし賊であったなら大惨事だが、皮肉なことにそれで我等も警備を見直せる側面があった。
時折皇都で肉体労働などをして小金を稼いでいるとも聞く。
五十を過ぎていながらあの自由な振る舞いは何なのか。
ああ、頭が痛い……
「アンネローゼ様?」
はっと気が付くと、シャーリーがすぐ隣で心配そうな顔をしていた。
「どうしたの?」
「いえ、お手紙を開けられる様子がないので……」
シャーリーが持ってきてくれた手紙は全て机の上に置かれたままだ。
いけない、少し考え事が過ぎた。
「もしかして、どこか具合がお悪いのですか?」
「大丈夫よ。気にしないで」
「ですが……」
「シャーリー、心配してくれるのは嬉しいけど、それより先に自分の為すべきことを為さい。今日の銀食器の磨きは貴女が担当でしょう」
「……はい。申し訳ありません」
まただ。どうして私はこうなのだろう。
シャーリーはいい娘だ。純粋に私を心配してくれているのは分かっているのだ。
身寄りがなく皇都を彷徨っていたところをオーベル様に拾われて以来、よく働いてくれている。
抜けているところも確かにあるが、本人は一生懸命だし私のことも慕ってくれる。
だが、私はそんな彼女にどう接してやれば良いのかが分からない。
相手はまだ十三歳の少女なのだ。未来のことも考えて、甘やかしてはいけないとは思う。
が、どうしても私の口調は強くなり過ぎてしまうのだ。厳しい家風の家に育ったからというのは言い訳だと分かっている。
私自身、本当はもっと柔らかい言葉をかけてやりたい。
が、その加減が分からないのだ……
そう考えていた時、扉の開く音がした。
目をやると、肩を落としたシャーリーが出て行くところだった。
「待っ……」
「失礼いたしました」
呼びかけた声も、伸ばしかけた手も届かぬまま、扉が閉められた。

「どうぞ」
部屋の扉を叩くと、中からオーベル様の返事が返ってきた。
少しいつもと様子が違う……何か良い事でもあったのだろうか?
「失礼致します――」
扉を開けて中に入る。机を挟んで、笑顔のオーベル様と渋面のシュツルム殿が向かい合っていた。
「オーベル様、皇都南西区の緑化に関する資料が届きました。お目通しを」
「ありがとう、アンネローゼ」
「……ご機嫌のようですが、どうされたのです?」
「ああ、カードでシュツルムに勝ったんだよ。最後の一勝負は際どかったけどね」
机に近付くと、確かにカードの小山があった。恐らくシュツルム殿は完敗と言っていいほど負けただろう。
二人の表情からもそれは読み取れるし、オーベル様はことカード勝負に関しては凄まじくお強い。
ご友人と勝負されるところを何度かお見かけしたが、ポーカーでもブラックジャックでも、最終的に勝つのは必ずオーベル様だった。
引きの強さ、退きの速さ、ブラフのかけ方、どれをとってもお見事と言う他はない。
「オーベル様にカードで勝負を挑むなど、愚の極みです。成績はどのような?」
「五十戦して、四勝三分け四十三敗だ」
「そのようなところでしょう。……オーベル様、まさか金銭を賭けたりなどは」
勝ったから笑顔、というのは理解できる。が、それにしてはいくらなんでも喜びすぎのように見える。
視線を向けると、オーベル様がうろたえた。
「いやいや、それはないよ。お金なんか賭けたらこうやってアンネローゼに怒られるからね」
少なくとも机の上にはカードと勝敗表しか見当たらない。その勝敗表にしてもごく単純なもので、金銭のやり取りがあるようには見えなかった。
「それなら結構です。では私は明日の準備がございますので」
「うん、よろしく」
音を立てないように扉を閉めて退室すると、少しだけその場に立ち尽くす。
カードに興じるなど、いかにも貴族然とした健全な行動ではないか。
いつもこのように平穏な生活をしてくだされば、私や騎士団の負担も軽くなるのだが……
小さく溜息をついて、自室に向かう。
まだ今日の仕事は終わっていない。明日届けることになっている書類をもう一度確認しなくては。

テーマ:栗鼠ゲーム - ジャンル:オンラインゲーム

  1. 2008/05/15(木) 18:03:54|
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中の人はヘビーメタルと刀を愛する超甘党。

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