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今日もいい日

不定期更新な日記だったり定期更新ゲーム『False Island』の日記だったり。 気分次第で更新、今日もいい日。

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Do you remember love?

薄闇が少しずつその色を強め、範囲を広げている。
気の早い星は既に幾つか姿を現し、いずれは月も昇ってくるだろう。
枝葉の茂る森を抜け、草もあまり生えていない乾いた荒地にやって来た俺とカレンは、お互いに少し離れたところに立っていた。
両親から剣術の基礎を学んだカレンの実力は、実際のところ俺にとって未知数だ。
これまでどのように戦い、どれだけ強くなったのか。小さい頃を知る者として、また一人の冒険屋として、実に興味がある。





既に目釘を改めた刀を抜き、右下段に構えているカレン。
対する俺は開手の左を前に、右の拳を中段にとる左半身。
相手の変化に最も対応しやすい構え。
手の内が分からない時は、対応できる最大公約数で臨むのが常道だ。
スッ、とカレンが一歩を踏み出す。
堂に入った足運び……空気の密度が高まる。
仕掛けるには頃合だが、それは向こうも同じこと。
少しずつ近づいてくるカレンを、動かずにじっと待つ。
まだ距離はある…定寸の刀の間合いは把握している。当然だが、それは俺の拳よりも遠くまで届く。
基本的に間合いというのは長い方が有利だ。相手の攻撃できない場所から攻撃できれば、それは大きな脅威になる。
だからこそ、接近戦では裏を取りやすいのだが。

三歩の距離から、一跳びで二歩を詰める。当然、カレンは応じてくる。後の先を取ろうと、下段から切り上げるだろう。
後の先を取らせ、俺は先の先を取る。詰めた勢いを乗せて左を一気に突き出し、首を狙う。
予想通りに切り上げてきたカレンは、しかしその動作を途中で変えた。切り上げよりも俺の左の方が速いと見抜いたか…さすがだ。
振り上げる要領で柄を俺の左にぶつけ、軌道を逸らす。退く一歩にこちらも合わせ、右の中段突きを放つ。
今度は下ろした柄で直接受け止められた。さらに牽制の突きでの反撃。いい反応をする。受けたままでいれば、俺が刀を奪っていたところだ。
続けての右の上段蹴りは、予想よりも軽く避けられた。瞬間的にだが、かなりの速さだ…これはまずい。
考える間もなく、刀が真っ直ぐに伸びてきた。辛うじて弾くが、アンネローゼの時のようにはいかない。アンネローゼよりもカレンの方が力がある。
弾くにはこちらもそれなりに力を込めなければいけない。救いは連続性だ。アンネローゼは両手に短めの剣を持っていたうえに、速さが身上だった。
一呼吸の間に三撃、四撃と打たれてはたまらない。カレンは一振りを、基本両手で構えている。
これだけ力の入った攻撃があの勢いで来たらお手上げだが、一撃を弾き切れれば次までの余裕が僅かに取れる。
もっともその弾くのがなかなかにしんどいのだが…態勢を立て直すほどの余力を残せない。弾ききれなければそのまま俺の負けだ。
不安定な態勢のままでは受けも取りづらくなっていく。カレンもそれは分かっているのだろう。無理な攻撃をせず、的確に隙をついてくる。
避けきれず、受けざるを得ない場所ばかりだ。
押されている――このままでは押し切られる。向こうの流れに身を任せてはいけない。流れは自分で作るものだ。
一撃ごとに受けづらくなる連撃を抑えこむには…
「!……ッ!」
左の肩口に『作った』大きな隙。隙を見逃さない実力者相手だからこそ、この手が使える――
「哈ッ!」
攻撃の来る場所さえ分かっていれば、対処のしようはいくらでもある。
「!?」
両の手で刀身を捕らえる無刀取り。うむ、久し振りに決まったな…ムルシドを放り投げた俺の腕力で押さえているのだ。
こうなれば押そうが引こうが、カレンでは動かせまい。
が、狙いは態勢を立て直すことにある。蹴りで攻めることもできるが、それでは趣に欠けるというもの。
カレンが刀を引くのに合わせて手を離す。お互いに構えを直して、呼吸を整える。
「…おじ様は、昔父さんとも試合したことがあるんでスよね?」
「何度となく、な。お互いに手の内が分かっているから、最近はやっていないが」
「そうですか…じゃあ、コレも知ってますよね」
左の上段に高く掲げた刀を、肩に当てて背に倒す。カレンの身体で刀身が隠れる。
この構えは…かつてカレンの父親、シュラも使った技。
「鬼人剣…」
「はい。おじ様はよく知ってる技ですけど、私の奥義でス」
これは危険だ。確かに鬼人剣自体は知っているが、それはシュラの鬼人剣。もしカレンが手を加えているとすれば、元を知っているだけに逆に読みづらい。
本来ならあの構えから全力を込めて逆袈裟に斬り下ろし、一歩踏み込んで同じ軌道で斬り上げる技だが、それと同じである保証はどこにもないのだ。
「…行きます」
カレンを取り巻く空気に熱がこもる。火竜の力が溢れている…これは、受け損ねると…
「鬼人剣・百式羅刹斬」
速い!だが、この逆袈裟はまだ読める。左右どちらに避けても切り返しのきくこの初太刀は、瞬間的に後ろに下がらなければ避けられない。
間合いの外に逃げるしかないのだ。そこをさらに踏み込んでの二の太刀…
「!」
違う。鬼人剣は最初から最後まで両手で刀を掴んでいた。それが、この二の太刀は左手だけ。
両手よりも片手の方が間合いは伸び、しかも左手は右手よりも柄の下。
刀身の長さを把握していても、どれだけ間合いが変わってくるか瞬間的には計算できない…
加えて軌道までもが違う。片手だからこそできる、逆袈裟から真上への斬り上げ。定石どおりに後ろに跳べば餌食になる。
「くッ…!」
全力で身体を開く。熱を持った刀身が、三寸…いや、一寸と離れていない空間を裂いた。
逃げ遅れた髪が数本宙を舞い、チリリと焦げる音がする。
ここで決めなければ次は危ない。強者に出会えた喜びが、全力を出せと訴える。
開いた身体の後ろから、右の拳の唸りが微かに聞こえた。
打ち下ろすのではなく、撃ち下ろす。
風を捲き、局地的・瞬間的にではあるが気圧さえ変化させる一撃が、大地に突き刺さった。
「あう…っ!」
無論直撃ではない。というよりも、あの体勢からではカレンの右側であるここまでしか届かなかったのだ。
が、気圧をも変える速度で吼えた一撃は、周囲に空気の断層を生む。鎌鼬に近い現象を。
「…カレン…?」
地面に倒れたカレンは、右の頬を押さえている。そして右腕と脚に溢れる赤。
「…やっぱり、おじ様は強いですね。あはは…」
力なく笑い、立ち上がろうとする。が、その身体がぐらりと揺れ、再び倒れた。
「済まん、手加減がきかなかった…傷を」
「来ないで!」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。これほど激しい拒絶をカレンから聞いたのは、初めてだった。
「来ないで……おじ様、見ないで…」
「…何を言っている。その傷、浅くはあるまい…手当てをしなければ」
「ダメです!来ないで!」
どうしたというのだ。カレンがこうも取り乱すとは…しかし、出血を押さえなければどうにもならない。
「ダメ…お願いですから…来な、いで…」
明らかに声が変わった。これは――泣き声だ。
「…カレン?」
「…」
急な出血のせいか、気を失ったらしい。とにかく応急処置を…
「…これ…は」
目を疑った。裂けていたはずの右腕と脚の傷は、既に出血は止まっていた。長く深く走っていた傷の周りには、艶やかな硬質の。
(竜の…鱗……!)
これを見られまいとしたのか…あの強い拒絶も理解できる。確かに普通の人間にはありえないことだし、隠そうとするに足る理由ではある。
だが――
「俺は悲しいぞ…カレン」
顔を隠していた手を取ると、やはりそこにも鱗はあった。
それ以上に、頬を伝っている涙の河が、俺の心を殴りつけてくる。
肩と膝を支点にして抱きかかえる。軽い。
「何故…俺まで拒む……」
鉄塊を履いたように。踏み出す一歩が重かった。

テントに運んだカレンは、寝かせた後も苦しそうにしていた。
傷のあった場所を覆う鱗は、若干薄れたもののまだ残っている。
額に手を当てると、まだかなり熱い。鱗が現れていることから考えて、火竜の力の一端だろうか。
当てていた濡らした布を取り替える。何度目かもとうに忘れた。
時折うわ言のような、「来ないで」という呟きが漏れる。
それを聞くたびに心に鎖が巻きついていく。
カレンが生まれた時から知っているが、結局は俺もただの人間だ。根本的なところでカレンやシュラとは違う。
無論そんなことは気にならなかった。
が――そう思っていたのは。
「俺だけだった、ということか」
悲しく、寂しく、辛い。それでも、今目の前に苦しんでいるカレンがいる。
こぼれ続ける涙を拭ってやる。悪い夢でも見ているのだろうか。それとも寝ている体勢がよくないのかもしれない。
上体を起こし、抱きかかえるようにして俺に寄りかからせる。幾らか呼吸の荒さが落ち着いた。
まるで小さな子供のようだ、と思った。
自分ではどうしようもなく、不安という感情の波に呑まれてしまう。夢の中さえ安息の地にはなり得ない。
俺が子供だった頃も、そんな夜があった。
そんな時、俺はどうやってその波から逃れていたのだろう。
思い出すことをやめていた、まだ俺が幸せだった頃のこと。
俺が波から逃れたのではない。誰かが波から救い上げてくれた。


今… あなたの声が聞こえる… ここにおいでと…

(ふと口をついて出たのは)

寂しさに…負けそうな…私に…

(二度と聞くはずのない、あの歌)

今… あなたの姿が…見える… 歩いてくる…

(おぼろげな記憶を頼りに、詞と旋律を思い出しながら)

目を閉じて… 待っている私に…

(歌い手がいなくなったはずの歌を)

昨日まで… 涙でくもってた… 心は…今…

(俺は歌っていた)

おぼえて…いますか… 目と目があった…時を…

(燃え盛る悪夢に、目を覚ました晩)

おぼえて…いますか… 手と手が…触れあった時…

(窓の外の闇に、眠れぬ恐怖を感じた晩)

もう… 一人…ぼっちじゃ…ない…

(俺が眠るまで。母が、この歌を歌ってくれていた)

あなたが…いるから…

(母は祖母から教わり。祖母は曾祖母から教わり。いつから歌われているのかも分からないという)

おぼえて…いますか… 目と目があった…時を…

(目の前に、父と母が立っていた。俺に頷きかけると、すぐに消えてしまった)

おぼえて…いますか… 手と手が…触れあった時…

(カレンを抱きかかえながら。いつの間にかもう片方の手で、しっかりとカレンの手を握っていた)

I… LOVE YOU… SO…


頬に残る涙の跡は乾き、傷を隠していた鱗も言われなければ分からないほど薄くなった。
カレンの呼吸も落ち着いた、規則正しいものになっている。

それでも俺は、歌い続けていた。
詞を間違えながら、許しを請うように。
つっかえながら、何かを探すように。
最後の一節だけが異国の言葉であり、いまだに意味を思い出せないその歌を。

腕の中の確かな温もりに、独り善がりな安らぎを感じながら。


テーマ:栗鼠ゲーム - ジャンル:オンラインゲーム

  1. 2008/05/07(水) 19:02:08|
  2. 偽島本編
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False IslandのE.No412 Blackwind。
中の人はヘビーメタルと刀を愛する超甘党。

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