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今日もいい日

不定期更新な日記だったり定期更新ゲーム『False Island』の日記だったり。 気分次第で更新、今日もいい日。

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Blackwind's Police Blotter 5-3 -Only Tonight-

午後の公務も順調に進み、問題が発生することもなく終わりを迎えようとしていた。
実質的にはもう終了しており、シャーリーとの合流地点である皇都の入り口に向かっているところだ。
「予定どおりに終わりましたね」
「そうだな。このまま行けばちょうどいい時間だろう……む?」
「どうしました?」
「主、あれを。シスター・リーンとシスター・キリアだ」
馬車の窓から見えたのは、修道服を着て歩く二人のシスター。そういえばパーツィバル孤児院があるのはこの地区だったな……と、袖をまくっている方のシスター、リーンと目が合った。
次の行動は予想がついたが、その速さは予想を大きく上回った。
「いようシュツルム!面白そうなカッコしてるじゃねえか!」
馬車が傾かんばかりの勢いで飛び掛ってくるとは思わなかった。相手次第では暴漢扱いされてもおかしくない。
「おいキリア、来てみろよ!居候のシュツルムが仕事見つけたらしいぜ!」
「今日一日限定だ。ま、色々とあってな」
遅れてやってきたキリアは、まずリーンをたしなめた。
「もう、急に走り出すから何かと思ったら……失礼でしょう、シュツルムさんにお詫びしなさい」
「だってさ、見ろよこのカッコ。まるで長靴履いた猫……いやアンタはデカすぎるから、長靴を履いた虎って感じだぜ」
それほど窮屈そうに見えるだろうか?俺自身はもう慣れたが。
「本当に申し訳ありません、シュツルムさん。何年も注意はしているのですが」
「そろそろ諦めた方が良かろう。服の色落ちも一つの味だ」
「おぅおぅ。ヒドいこと言ってるぜ……アンネローゼ、何か言ってやってくれよ」
「何年語りかけても、魚の返事は得られないでしょう」
「何だよ!執事が執事なら主も主だぜ……」
むくれながらリーンは馬車から離れた。
「もう……信徒の方々も見ているのよ、リーン。お願いだから孤児院の評判を落とすようなことは止めてちょうだい」
「……ふん、アタシは先に帰るぜ。またな、二人とも」
不機嫌そうに大股で去っていくリーン。何から何までシスターらしくない。
キリアがふう、とため息をつく。
「本当はとてもいい子なんです……お気を悪くされないでください」
「気にしてはおらん。そうだろう、主?」
「ええ。今日はもう時間がありませんが、またその内に孤児院にも伺います。ミュラー院長によろしくお伝えください」
小さく頭を下げ、キリアはリーンの後を追っていった。
「あの二人も孤児院の出身なのか?」
「そう聞いています。テレーズとは同期で、引き取られるより孤児院に残る方を選んだと」
「ほう……」
白く輝いていた太陽が、いつの間にか朱色に変わりつつある。
向かった皇都の入り口には、おかっぱの少女が待っていた。



「やあ、お帰り。随分と楽しんでいたようだね、アンネローゼ」
館に戻った俺たちを出迎えたオーベルは、我が事のようにニコニコしていた。
「『楽しんでいたよう』とはどういうことでしょう?まさか、私たちの後を……」
「とんでもない。さすがに書類が片付かなかったからね」
片付いていればついてきたということだろうか?
「そのかわり、アルマに行ってもらった。一部始終聞かせてもらったよ。堂々としたものだったそうだね、アンネローゼ」
「アルマが来ていたのか?気付かなかったぞ」
「我が家のメイドは優秀ですよ、シュツルム。後をつけさせてバレるようなことはありません」
それはメイドの仕事ではない。
「あの、旦那様。私にはそのようなことはとても……」
「シャーリー、安心したまえ。君にはもっと別のことを頼みたいからね……さて、帰ってきたばかりで済まないが、すぐにまた出発だ」
「シュツルム、馬車の用意を。ベストパル候の館です、公式の四頭立てで参ります」
「心得た。我が主」
アンネローゼと俺のやり取りを直接目の当たりにしたオーベルが、感嘆の声を上げた。
「アルマから話は聞いてたけど、素晴らしいね。今日一日だけとはもったいない……シュツルム、もう一度カードをやりませんか?」
「誘いは嬉しいが遠慮しておこう」
「お戯れはお止しください。さ、オーベル様もお仕度を」
「分かっているとも。シャーリー、朝言った通り頼みたいことがある。ついておいで」
「はい、旦那様」
それぞれがそれぞれの場所に散っていった。
厩舎の者には既に話が通っており、馬たちも出番を待っている状態だ。
正面扉の前に馬車を回して、オーベルとアンネローゼが出てくるのを待つ。
残った任務はあと一件、ベストパル候の館で催される舞踏会に招待されたオーベルの送迎。
アンネローゼはその護衛だ。本来なら特に問題もなく終わるはずなのだが、どうも胸騒ぎがする。不安なわけではないのだが、何か起こりそうな予感が。
何しろオーベルが直接関わっているのだ。ただで済む可能性は低い――と考えていたところで、正面扉が開いた。
出てきたのは公用の服に着替えたオーベルと、付き従うアンネローゼ。そして長持を抱えたシャーリー。
「オーベル、シャーリーも同行するのか?」
「ちょっとした演出に、向こうで着替えをしようと思っています。アンネローゼに長持は持たせられませんからね」
「……」
何やら訝しげなアンネローゼ。真意を測りかねているのだろう。
対してシャーリーは、主の衣装が入っている長持をおっかなびっくり抱えている。
「俺が持とう」
中身が衣装である以上、さほど重くはない。だが畳むならともかく、折ってしまうと皺になる。
出来る限りそのままの状態で入れてあるため、長持はそれなりの大きさだ。
小柄なシャーリーでは危険過ぎる。
「シュツルム様、それでは私のお仕事がなくなってしまいます……」
「君の本当の仕事は向こうに着いてからじゃないか。さ、行こう。さすがにそろそろ出ないと遅れてしまう」
「既に遅れております。お急ぎください」
まったくオーベルには時間の観念というものがない。アンネローゼが予定の管理をする以前は、待ち合わせや期限の忘れが非常に多かったという。
仕事はできるがややだらしない主人と、しっかり者の部下という実に分かりやすい組み合わせだ。
「あ、しまった。ハンカチを忘れてきたなあ」
「そうでしょう。机に置き忘れてあったのを私が持ってきておりますから」
「助かるなあ。ありがとうアンネローゼ」
抜けているというより、世話を焼かれたがっているようにも見えるが……今はそんなことを考えている時ではない。
全員が乗り込んだのを確かめて、御者に合図を送る。
遅れを取り戻すために少しだけ急ぎながら、馬車が走り出した。

「よう、オーベル。久し振りだな」
館に入るなり、声をかけてきた男。短めの髪とがっしりした体つき、よく通る野太い声。楽団の奏でている静かな音色とは正反対だが、不快感はなかった。
「お招きいただきありがとう。シュツルム、紹介しましょう。友人のマグドール・フォン・ベストパル候…マグドール、こっちはシュツルム。うちの居候だよ」
「初めてお目にかかる、シュツルム殿。マグドールで結構だ」
「助かる。俺も呼び捨てにしてくれて構わん」
俺よりは背が低いが、握手してみるとその身体は本物だ。力強く、掘り込んだ岩石のようにしっかりしている。
「マグドールは、私の生まれを気にしない、数少ない友人の一人なのです」
「今日は内輪の小さな会だ。『娘を嫁に~』なんて連中は一人もいない。話せる連中しか呼んでないから安心してくれ」
「ありがたいなぁ。特に最近、ブランスバイク候がやたらと娘さんを押してくるんだ……正直、困ってる」
「ブランスバイク候の息女か。舞踏会や晩餐会で何度か見かけたが、権力志向の父親に似ず、なかなかに出来た女性だったぞ」
「今の所は結婚なんて考えてないからねぇ……それよりマグドール、どこか空いてる部屋はないかな?」
「部屋?いくらでも使ってくれて構わんぞ……ああ、呼ばれてしまった。済まん、また後でな」
舞踏会の主催者ともなると、特定の客とばかり話しているわけにもいかないらしい。
さて、こちらも長持を部屋に動かさねばならん。
そう思って動こうとした俺を、オーベルが止めた。
「ここからはシャーリーの仕事です、任せてあげてください。シャーリー、言ったとおりに頼むよ?」
「はい、旦那様」
長持を受け取ったシャーリーは、そのままアンネローゼに向き直った。
「アンネローゼ様、お部屋の準備をしようと思います。ご指示をいただけますか?」
「私が?……いいわ、行きましょう。シュツルム、この場を任せます」
「うむ」
マグドールのメイドの先導で、二人は部屋に消えていった。
残されたオーベルが、意味深に微笑んでいる。
「……何を仕込んだ?」
「それはもう、素晴らしい物を」
それきり、オーベルはそのことについては触れなかった。大広間で供されている酒を飲み、時折華やかな料理をつまみ、声をかけてくる者たちと談笑する。
小さな会と言っていたが、それでも客と思われる者だけで三十名ほどはいる。
マグドールの言った通り、集まっているのはオーベルにとって付き合いやすい者たちだけらしい。
皆、職業上の立場の違いや年齢の違いは常識的に受け止めるが、身分の違いに対しては過剰な反応をしていない。
穏やかに時が経ち、ふと気が付くと、マグドールが大広間の中心で役者のように両腕を広げていた。
「お集まりの諸君!ご覧の通りの小さな場ではあるが、どうか今宵一時を楽しんでくれたまえ!」
楽団の曲調が変わった。
静かな、あくまで背景として奏でられていた楽曲が、軽やかで心躍らせるものへ。
舞踏会が始まったのだ。
幾人もの男女が連れ立って広間の中央に進み、曲に合わせて踊り始めた。
「オーベル、行かぬのか?」
「今日は止しておきます。それより、そろそろ主賓の準備が終わる頃のはずですが……ああ、来ましたよ」
手で示された方に目をやる。
その方向、部屋から出てきたのは――
「――アンネローゼ――?」
その身を包むのは、普段の鎧ではない。純白を基調とし、裾や首周りに薄い青をあしらい、所々に花の刺繍を施した見事なドレス。
短い袖に、やはり薄い青の長い手袋。銀細工のティアラと、控えめながら存在感のある真珠の首飾り。
周りの者たちも、突然現れた花に驚きを隠せない様子だ。
その当人はやや早足で、こちらに真っ直ぐやってきた。
「いやあ、素晴らしい。非の打ち所がないよ、アンネローゼ!」
「……オーベル様……説明をいただけますか……」
声が怒りに震えている。
「いやあ、折角の舞踏会だからね。アンネローゼにも楽しんでもらおうと思って。たまにはいいじゃないか、こういうのも」
「……お心遣い、感謝いたします。ですがシャーリーまで巻き込むことはなかったのでは?」
「僕が直接言ったら命令になっちゃうからね。可愛いシャーリーの『お願い』なら、君も弱いだろう?」
なるほど、この衣装を着せることがシャーリーの仕事だったか……壁際に小さく控えるおかっぱの少女は、ドレス姿のアンネローゼにぼーっと見とれている。
「今日一日限りで、普段とは違うことをやってきたじゃないか。その締め括りに、一つ花を添えたいと思ったんだよ」
「……今日一日限りとのお言葉、間違いはございませんか?」
「もちろんだとも」
諦めにも似たため息が漏れた。
「分かりました。ですが私は護衛の剣士です。不調法者にて、踊りの心得はございません」
「気にすることはないよ。こういった内輪の集まりは、初心者の練習も兼ねているからね……と、いうわけでシュツルム。アンネローゼの相手役をお願いします」
「何?俺に踊れと言うのか?」
自慢ではないが俺も踊りの心得はない。村や街の祭りならともかく、公式の場での踊りなど初めてだ。
「難しく考えなければいいのです。曲に合わせて動けばそれで」
そのような単純なものだろうか。アンネローゼに目をやると、さすがに迷っているようだ。耳が朱に染まっている。
俺としては、判断は主であるアンネローゼに任せるしかない。
どうするつもりか――?
「シュツルム」
厳かな、凛とした声が響いた。次いで、その右手が伏せたまま俺に伸ばされる。
それが答えか。
「謹んで、お相手仕る」
伸ばされた手を取り、広間の中央に向かって歩を進める。お互いに向き合って、曲の切り替わる時を待つ。
その手を軽く握ると、小さな震えが伝わってきた。少し俯いたアンネローゼを見ると、震えながら顔を赤くしていた。
「……今日一日だけと割り切って、無茶な振る舞いを己に課してきました。ですが、やはり限界です……」
手を離せば、その場に崩れてしまいそうだった。
「申し訳ありません、シュツルム殿。私には、もうこれ以上は無理です……」
話し方もいつものそれに戻っている。一日、いつもと違う振る舞いをするというのは大きな負担だったのだろう。
俺のような者が付き従っていたのだから、想像するに余りある。
少し強く手を握り、軽く抱き寄せる。
「あ……」
「案ずることはない。俺の動きに身を任せればいい」
見様見真似でどうにかなるだろう。このままでは踊るどころか、一歩もこの場から動けない。
「練習と思うのだ。次の機会にオーベルを連れ出して、足の一つも踏んでやれ」
クスリ、と小さく笑った。手の震えが収まり、落ち着いた表情に戻る。
「……はい。考えておきます」
その言葉と同時に曲が変わった。

(腕を回し、腕を解き、前に出ては下がり、下がっては回る)
(単純な動きを少しずつ組み合わせ、転換する曲に合わせて早さを変える)
(私が伸ばした手が取られ、私に伸ばされた手を取る)
(抱きかかえられる刹那の喜び。離れていく刹那の寂しさ)
(その両端の間を、まるで振り子のように)
(今夜だけは)

(今夜だけは、夜明けを見たくない)

一晩中続くかと思われた宴も、いつの間にか終わりを迎えた。
客たちは名残を惜しみながら帰っていき、俺たちもまたマグドールに礼を言って館を辞した。
帰りの馬車の中で、シャーリーは俺に寄りかかったまま、既に眠っている。オーベルは眠ってはいないだろうが目を閉じ、何か考え事をしているようだ。
普段の鎧に着替え終わったアンネローゼは、じっと窓から外を見つめていた。
柔らかい月の光を受けて、その青い瞳が煌く。
お互いに何も言わない。俺は今日一日のことを思い返していた。アンネローゼもそうかもしれない。
オーベルの思いつきではあったが、なかなかに楽しい一日だった。そう思った時、馬車が突然止まった。
御者台の小窓が開き、御者が慌てた口調で伝えてくる。
「狼藉者です。十人はおりませんが、囲まれました」
目を閉じていたオーベルが、やれやれとため息をついた。
「折角の楽しい一日だったのに……」
「好事魔多し、ということだ。出るぞ、アンネローゼ」
「心得ています」
既に遊びの時間は終わった。俺たちの関係も昨日までのそれに戻っている。
外に出ようとした俺たちを、オーベルが呼び止めた。
「シュツルム、荒事にその手袋は向きません。これを使ってください」
差し出されたのは黒い革の手袋。確かに絹の手袋よりは耐久性がある。
「アンネローゼ。できるだけ音を立てずに済ませたい」
「無論です。シャーリーを起こすわけには参りません」
話が早い者は助かる……と、オーベルが懐から何かを取り出した。
「さて……一枚引いてくれるかな?」
扇形に開かれ、突き出されたカード。言われるままにアンネローゼが引いたのは、エース。
「なるほど。さ、シュツルムも引いてください。二十一が揃えばいいのですが」
面白い占い方だ……無造作に一枚を引く。
「……なんとなく、予感はあったがな。安心しろ、オーベル。ツキはこちらにある」
札を放り、アンネローゼと共に月明かりの下へ飛び出す。
オーベルの手に戻った札の中で、道化師が不敵に笑っていた。

テーマ:栗鼠ゲーム - ジャンル:オンラインゲーム

  1. 2008/04/18(金) 22:21:12|
  2. 偽島の裏
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