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今日もいい日

不定期更新な日記だったり定期更新ゲーム『False Island』の日記だったり。 気分次第で更新、今日もいい日。

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Blackwind's Police Blotter 5-2 -Over The Heart-

「アンネローゼ様、シュツルム様。行ってまいります」
「うむ、気をつけてな」
皇都の入り口でシャーリーだけ馬車を降りた。この地区で回りたい店があるという。
「主、声をかけてやらぬのか?」
「……」
アンネローゼは無言でシャーリーを見つめている。対してシャーリーの方は戸惑っている。
「あ、あの……」
「シャーリー、私たちも一度館に戻ります。夕方の四時にここに戻ってきなさい」
「は、はい」
「日があるうちとはいえ、人気のない場所は避けるように。何かあったら大声で周りの人に助けを求めなさい。分かった?」
「分かりました」
小さく頭を下げると、テトテトと走り去っていった。
その後姿を見つめて、アンネローゼが小さくため息をつく。
「……私は、あの子にどう接してやれば良いのでしょう」
「分からんのか?」
「厳しくするだけではいけないとは分かっています。かといって、あまり甘やかすのも良くありません……」
「難しく考えるから迷うのだ、主。まずは三つだけを守ればいい」
「三つ、ですか?」
「良い事をしたら、褒める。悪い事をしたら、叱る。そして自分が相手をどう思っているかを、素直に伝える。他の事は全てこれらの強弱と言葉尻の問題だ」
「……成る程。年長者の言うことには含蓄がありますね」
「慣れてきたようだな、主。それでいい。今日の俺は配下なのだから、あまり畏まることはないぞ」
「少し分かったような気がします。行きましょう」
「心得た。我が主」



デーツ皇国にはいくつもの『院』があり、それぞれが公務を持っている。
大体は名前の通りの内容で、運営は税金によって賄われている。
財務管理院、育成教育院、環境地理院、建築管理院などなど。皇都・ワールッツに本院を置くだけの『院』と各地に分院や出張所がある『院』に分かれ、特に後者の場合は本院が地方業務の統括も行う。
オーベルは複数の『院』の職に名を置いているが、これは違法でもないし別段珍しいことでもない。
本人の能力と希望、周囲の推薦があれば認められるのだ。
今日のアンネローゼの仕事はオーベルが纏めた案件の書類を各院に届けること。
本来は本人が行くべきところだが、複数の『院』の業務を抱えている者は当然多忙だ。
そういった場合は代理の者(大抵は執事だが)が名代として出張ることになる。
「そういえば前々から訊こうと思っていたが、何故オーベルには執事がいないのだ?」
「オーベル様の事務処理能力は稀有なものです。執事を必要とされたことはありません」
「ほう」
「ただ困ったことに、時間の観念が。ですから僭越ながら、私がご予定の管理だけをしています」
「護衛騎士兼秘書、といったところか」
俺がそう言うとアンネローゼは小さく笑った。
「そうですね。ですが私は正式には騎士ではありません。まだ見習いです」
「騎士になるにはどんな条件があるのだ?」
「これといって決まったものはありません。ですが騎士は人々を助け、その手本となるよう定められています。それに相応しい行いを心がけることです」
口調が砕けたわけではないが、時折柔らかい言葉遣いをするようになった。
それに態度も、今までより打ち解けたような気がする。
「私もいつかは、と思っていますが……同時に自分はあらゆる面でまだ早い、とも思います」
「そう思うのは悪いことではない。が、自分を過小評価せんようにな」
「努力します。ところで、シュツルムは……」
言いかけて口をつぐんでしまった。余計に気になるではないか……
「何だ?訊きたいことがあるなら訊けばいいだろう、主」
「その、例えば……騎士になるつもりは、ないのですか?」
「……随分と突然だな。何故そんなことを?」
「少し、気になったのです。シュツルムはいつまで……」
言葉が続かない。
「申し訳ありません。やはりこの話は忘れてください」
「主がそう言うなら従おう」
それから最初の目的地に着くまで、お互いに無言のままだった。

「……失念していました」
眉根を寄せて悔しそうな表情のアンネローゼ。
午前中最後に訪れたのは、南東区にある皇都警備隊四番隊隊舎。
皇都の警備状況改善案を携えての訪問だったが、隊舎であればどこに届けてもいい物だ。
十二もある隊舎の中からオーベルがなぜ四番を指定したのか。
その疑問の答えは、ここが隊舎の玄関であるにも関わらず堂々と笑い転げているこの者に他なるまい。
「あはははは!シュツルム、何だよそのカッコ!」
ガートルードが腹も捩れんばかりに笑っている。が、既に俺の中に恥ずかしいという考えは残っていない。
開き直りとも違う、逆にこの珍しい状況を楽しむ余裕があった。
「どうだ?オーベルはなかなかに似合うと褒めてくれたぞ」
礼服の長い裾を翻すように、その場でくるりと回ってみる。
「あはははは!あ、あっははは!」
お手本のような大笑いだ。その声に釣られて、隊舎からぞろぞろと他の隊士たちまで出てきてしまった。
「おいガートルード、うるせ……ぶっははは!シュツルムさん!?」
「あっははは!ま、祭りでもないのに、何やってるんすかシュツルムさん!」
ガートルードと連れ立って酒を飲みに行く機会があったおかげで、いつのまにか警備隊にも顔が知られるようになった。
警備隊を構成している隊士たちは身分としては一般市民で、細かい儀礼などはあまり気にしない者が多い。
その中でも四番隊は、現隊長の方針が『粗にして野だが卑にあらず』であるおかげでかなり自由な気質だ。
声を上げて笑っているのは主に若い隊士たちだが、後ろの方で年のいった隊士たちも口に手を当てて笑いをこらえている。
その中には隊長と副隊長の姿さえ見えた。
「こんなデカい執事、見たことないよ!あはは、こんな服どこに売ってるのさ!」
「知らん。上から下まで全てオーベルが用意してくれたのでな」
「あはははは!何考えてんだ、あの人!あっははは!」
膝を折って咳き込む程に笑い、さらに周囲の笑いの渦が収まったあたりで、ようやくガートルードは落ち着いた。
と言っても目尻には涙が溜まっているし、息も静まっているわけではないが。
「はー、はー……あーおかし。ところでさ、マイザー候の名代でアンネローゼが来るとは聞いてたけど、何でシュツルムも一緒なんだ?」
「うむ、実はな……」
説明を受けたガートルードは、もう一度笑った。
「あはは、シュツルム幾つだよ!子供じゃあるまいし、いい年して何やってんのさ」
「そのぐらいにして下さい、ガートルード。これでも公務の最中です」
やや大きめな咳払いをして、アンネローゼが場の空気を変えた。いや、これは……それだけではない。
アンネローゼの纏っている気配。先ほどまでとはまるで質が違う。
「シュツルム、ご苦労でした。私はオイゲン隊長と話があります。先に馬車にお戻りなさい……それと、私が戻るまでにコーヒーを」
堂々たるその態度、強い意志のこもった眼。厳しくも暖かさを内包した声。
ここにいるのは、生真面目で押しに弱い女性剣士ではない――君臨するべくして君臨する者。
アンネローゼが俺に対してこれほど強く出るのは初めてだ。隊士たち、ことにガートルードが呆気にとられている……これは、実に面白い。
「心得た、主。ところでそろそろ昼餉の時間だが、ご友人を誘われては如何か?」
「よい提案です。ガートルード、時間があれば食事を一緒にどうですか?」
「あっえっ……あの……はい、謹んでお受けいたします……」
何か勘違いしている……というより混乱しているのか。
「近くに魔術研究院の呪術研究棟があります。テレーズにも声をかけてみましょう。シュツルム、手配を任せます」
「心得た、主」
何を吹っ切ったのかは分からんが、アンネローゼもようやく舞台に上がってきたのだ。
幕が下りるまで、遠慮なく相手を務めさせてもらうとしよう。

「それにしても……実に不思議な光景ですわね」
「不思議っていうか、信じられないよ」
昼餉を終えて、今は食後のコーヒーの時間。
俺たちがいるのは通りに卓と椅子を出した開放型の店で、店主に少し無理を聞いてもらって俺がコーヒーを淹れている。
本来は店員が使うべき台車と道具一式を貸して欲しいとの要求を、俺の事情を聞いた店主は苦笑交じりに受けてくれた。
「信じられなくはあるけれど、シュツルム殿もまんざらではないようですわね?」
「仕える相手は選ぶ。誰でもいいというわけではない」
空になったカップにコーヒーを注ぐ。基本的にはアンネローゼの後ろに控えているが、卓上に変化があればそれに応じるのが俺の役目だ。
膳の上げ下げはもちろん、時には無言の要求も満たさなくてはならない。
最早ここまでくると執事の役割を越えている気もするが、これはこれでなかなかに楽しいものだ。
「じゃあさ、今度はあたしに仕えてみてよ。面白そうだし」
「ガートルードにか……」
ちらり、とアンネローゼに目をやる。無言のままで小さく首を振った。
「主は許さぬそうだ」
「えー、何でだよアンネローゼ。いいじゃん、ちょっと借りるぐらい」
「なりません。シュツルムは私の執事です……本人が望む、というなら考えますが」
逆にちらり、とこちらを見る。どういう心境の変化があったのか、今のアンネローゼは主としての堂々たる態度を取り続けている。
声には威厳、視線には自信。俺が別の人間に仕えることなど許さぬという威厳と、俺が別の人間に仕えることなどないという自信。
「この身が二つあれば、二つの身をもって一人の主に仕えるだろう」
「あらあら……」
「ちぇっ。何だよそれ……」
俺の答えは予想通りだったのだろう。何の変化も見せずに残っていたコーヒーを優雅に飲み干し、アンネローゼは静かに席を立った。
無論その椅子を引くことも俺の務めだ。
「私たちはそろそろ行かねばなりません。ガートルード、テレーズ。急にも関わらず有難うございました」
「もうちょっとシュツルムの執事っぷり、見てたかったけどなあ」
「公務では仕方ありませんわね。こちらこそ誘ってくれてありがとう、アンネローゼ」
「シュツルム、馬車の用意を」
「既に」
満足そうに頷いて歩き出す。残される二人に一礼して、俺もその後を追った。

「いやー……しかし大したもんだね。あんなアンネローゼは初めて見た」
「そうね。いくらマイザー候の命とはいえ、あそこまで見事に振舞うなんて。驚かされたわ」
「何ていうのかな、いい意味で仕えられるのが当たり前っていう、自信みたいなもんがあったよ。これから先、もっと上の立場に行くんじゃないかって、そんな気がした」
「……時々、貴女の意外な鋭さにも驚かされるわ」
「えー、何だよそれ……」


テーマ:栗鼠ゲーム - ジャンル:オンラインゲーム

  1. 2008/04/18(金) 22:02:11|
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False IslandのE.No412 Blackwind。
中の人はヘビーメタルと刀を愛する超甘党。

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