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今日もいい日

不定期更新な日記だったり定期更新ゲーム『False Island』の日記だったり。 気分次第で更新、今日もいい日。

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Blackwind's Police Blotter 4-2 -Rainbow(In The Night)-

ベッドの上で、少年は所在なさげにキョロキョロしていた。
窓に寄りかかっているのはシスター・リーン。そしてもう一人、昨日は見かけなかった別のシスターがいた。
彼女は音も立てずに椅子から立ち上がると、病室に入った俺たちに向かって静かに頭を下げた。
「キリア・フリードと申します。当孤児院のシスターをしております」
一弦の弦楽器を静かに奏でるような、細い声をしている。白磁のような白い肌と、柔らかな物腰。
見た目の印象は、まさにシスター・リーンの対極と言えよう。
「そう言やあ、ちゃんと挨拶してなかったっけ。アタシはリーン・ハルト。ま、ひとつよろしくだぜ」
寄りかかった姿勢は変えず、手を上げるだけの軽い挨拶。白い歯が、褐色の肌に映えて光る。
「シュツルムだ。テレーズの友人であるアンネローゼのところで世話になっている」
「いい年して居候?おお神よ、このぐうたら親父に天罰を与え給え」
「リーン。無礼をお詫びしなさい」
「構わん、シスター・キリア。どうせその祈りは叶うまい」
「ほお…その根拠を聞きたいぜ」



「神の仕事は祈りを聞くことであって叶えることではない。叶えるのはいつでも人間だ」
教会で言うには些か無遠慮かもしれないが、事実は事実。神が人の祈りを叶えたところを、史上一度でも誰かが見ただろうか。
シスター・リーンがカラカラと笑った。
「いいね、いい!アンタいいよ、気に入ったぜ!神様は助けてなんかくれねーもんな!」
「相変わらずシスターとは思えないことを言うわね…そのうち貴女にこそ天罰が下るわよ」
「大丈夫だって。最後に全部許してくれるぐらい心が広いんだから、悪口の一つ二つでそんなもの下りゃしないよ」
とんでもないことをのたまっている。神の使徒たるシスターの言動として、ふさわしいとは言い難い。
「あ、あの……」
ベッドの上の少年が、遠慮がちに口を開いた。
「ここは……どこなんでしょうか……?」
「ワールッツの北東区にある、パーツィバル孤児院よ。あなたは昨日、朝売りの市の近くで倒れていたの」
シスター・キリアが事情を説明すると、少年は小さい身体をさらに小さくしてしまった。
「そうだったんですか……僕を運んでくれたのは……」
「こちらのお二人よ」
「ありがとうございました。僕はウィルといいます……東の、ネルトリング市から来ました」
「ネルトリングぅ!?そんな遠くから、一人で?」
「はい……」
「テレーズ、そのネルトリングとやらは遠いのか?」
「歩いていくなら、大人の足で七日というところですわ」
とても近いとは言えない。十やそこらの子供なら尚更だろう。
それほどの距離を、倒れるほどの疲労を抱えながら、どうしてこの少年はやってきたのか。
「ヒューベルという花を探してるんです。珍しい花みたいで、ネルトリングの近くには咲いてなくて……」
「ヒューベル……」
初めて聞く名の花だ。もっとも、植物というのは気候の影響を受けやすい。
地方ごとに咲く花、咲かない花があるのは当然だ。
「…私は聞いたことがありません。ごめんなさいね、ウィル。力になれなくて」
「チビどもの授業中だけど、院長なら知ってっかもな。ちょっと聞いてきてやるぜ」
「その必要はないわ」
部屋を出て行きかけたシスター・リーンを、テレーズが呼び止めた。
「あん?」
「ヒューベルの咲く場所なら……心当たりがあるわ」
ウィルをじっと見据えるその目には、読み切れない感情が渦巻いていた。

体力的に回復していたウィルは、いつまでも厄介にはなれないから孤児院を出ると言った。
すぐにでも花を探しに行きたいようだったが、テレーズはヒューベルの咲く場所にはまだ案内できないと言う。
「私に任せなさい。でもその前に、もう少し準備をしなくちゃダメよ」
そう微笑むテレーズを前に、俺とウィルは顔を合わせて首をかしげるばかりだった。
孤児院に別れを告げ(シスター・リーンは今度は酒を飲みに来いと言って、シスター・キリアにたしなめられていた)、差し当たって行く場所はテレーズの自宅である。
病み上がりということで大事をとって、ウィルは俺が肩に乗せていった。
初めのうちこそ恥ずかしいと渋ったが、そこはやはり子供。
「わあ……すごい。こんなに高いんだ……」
「なかなか新鮮な視点だろう」
地上二メートルから見る世界は、ウィルのお気に召したようだ。
行き交う大人たちよりも高く、しかも建物に上るのとは違って移動ができる。
「ふふ……」
「どうした、テレーズ。何か可笑しかったか?」
「ええ。まるで祖父と孫のようですわ」
「……ウィル。年は幾つだ?」
「十一歳です」
五十半ばの俺からすれば、確かに孫と言ってもおかしくない。しかし……いつの間にか俺もそんな年になっていたか。
「お祖父さん……ですか。僕は母さんの方のお祖父さんとお祖母さんしかいないんです」
おそらく、父方は亡くなっているのだろう。敢えて訊くことではない。
「そうか。祖父母は優しいか?」
「はい!」
いい返事だった。しかし、テレーズが時折じっとウィルを見つめていることには、気付いていないようだった。

テレーズの屋敷は、オーベルの館ほどではないにしろなかなかの大きさだった。例によって余り気にしていなかったが、サンドルフ家もそれなりに名の通った名家なのだ。
案内されたテレーズの自室は、魔術に関する物が雑然と並んでいた。分厚い本や小動物の骨、様々な金属片や薬品。
一見散らかっているようにも見えるが、どうやら一定の法則に従っているらしい。
「さて、ウィル。まず貴方の話を聞きたいわね」
「……僕の話、ですか?」
「ええ。最初に貴方の名前。姓まで教えてもらえるかしら」
この質問に何の意味があるのかは分からない。が、テレーズにとっては大事なことらしく、笑顔ではあるがその目は真剣だった。
「バルトカッツです……ウィル・バルトカッツ」
「……そう。ありがとう……次だけど、どうしてヒューベルを探しているの?」
「それは……」
赤い顔をして口ごもってしまった。ふむ、大体想像はつく。
「……惚れた相手への贈り物か」
「な!何で分かるんですか?」
「家族への贈り物や自分で蒐集するためなら、顔を赤らめる理由はないだろう」
「う……そうです。隣の区に住んでる子で…」
「可愛い娘なの?」
「はい…」
「優しい娘か?」
「よく意地悪されます……たまに優しいです」
「あらあら。で、どうして好きになったの?」
「実は……僕、父さんがいないんです。三年前に、流行り病で死んでしまって」
「……」
「学校でよく苛められました。その時にメルが……あ、メルっていうのはその子の名前です」
「助けてくれた、というわけか」
「はい。『お父さんがいないのはウィルのせいじゃない』って。すごく嬉しかった……」
「でも、意地悪はされるの?」
「……されます。メルは僕の後ろの席なんですけど、授業中に後ろから突つかれたり……お弁当のおかずを取られたり。たまに宿題を押し付けられたりも」
「それでよく好きになったものだな」
「僕が本当に嫌なことはしないし、言わないんです」
何ともまあ…実に分かりやすいではないか。思わずテレーズと目を合わせてしまったが、やはり笑い出しそうなのをこらえていた。
「で、その子……メルにどうしてヒューベルを?」
「メルは花が好きなんです。学校でも花の世話をしてて……それに……」
「それに?」
先にも増して赤くなっている。
「……もうすぐ……メルの誕生日なんです……」
さっきから背中がむず痒くて仕方がない。
「ゴホン……して、何故ワールッツに来たのだ?」
「ヒューベルは図鑑にも載ってないんです。でも父さんが、『そういう花がある、皆知らないけど父さんは知ってるんだ』って……父さんは一度も嘘をつかなかった。皇都の動植物研究院で訊けば、何か分かるかもしれないと思ったんです」
「随分と無鉄砲だな。期日は近く、確たる手がかりはなし。それでよく動いたものだ」
「メルにもよく怒られます」
また背中が……
「事情は分かったわ。少し待っていて」
立ち上がり、本棚を探っていたテレーズが持ってきたのは、一枚の古ぼけた地図だった。
デーツの一部を切り取ったそれにただ一箇所、都市や街道・山河の名とは別に、赤く囲われた部分がある。
「ウィル、御覧なさい。ここがワールッツ、こっちがネルトリング。そしてこの印の場所が……」
「ヒューベルのある場所……なんですね。ワールッツから……どのぐらいでしょうか?」
「馬があれば半日もかからずに行けるわ。でも、今はまだダメ」
「そんな……メルの誕生日まであと十日しかないんです。どうしてもヒューベルを持って帰りたいんです」
「まあ落ち着け、ウィル。テレーズは意地悪をしているわけではないはずだ……何か理由があるのだろう?」
ご名答、と言うように笑った。
「ウィル、よく聞いて。ヒューベルはただの花ではないの……一種の魔法生物なのよ」
「えっ!」
「性質は普通の植物とほとんど変わらないわ。動き回るわけでなし、水をやれば成長もする。ただ、微弱な魔力を帯びてるの」
「周りに影響することはないのか?」
「それは大丈夫ですわ。花自身に影響する類のものですから……そういう理由で管轄は動植物研究院ではなく、私たち魔術研究院になっておりますわ」
「なるほど。それで一般の図鑑には載っていないのか」
「はい。加えて希少性が高く、一株から一つしか種が取れないのです。その種も、芽を出すまでに五年もかかってしまいます」
気の長い話だ。しかし、今日これから取りに行くのがダメというのは何故だろうか。
「ヒューベルの帯びる魔力の効果のせいですわ。そこが普通の花と違う点とも言えますけれど、ヒューベルは陽の光を嫌いますの。日中は花を閉じ、太陽が沈んでから咲く。夜でなければ見つかりませんわ」
だが、それにしても一般人が誰も知らないというのはおかしい。情報を秘匿する理由が別にあるはずだ。
そう言うと、テレーズはまたも正解の笑みを浮かべた。
「その問いにお答えする前に……シュツルム殿は、ヒューベルの捜索にご協力いただけますの?」
「まあ乗りかかった船だ。ここまで来て身を引くのも後味が悪い」
「それを聞いて安心いたしましたわ……情報制限の理由、そして今はまだ探しに行けないもう一つの理由ですが、ここの土でしか育たないために、この場所にしかヒューベルは咲きませんの……そして、この地域は特別な地域」
実にいい笑顔をしている。猛烈に悪い予感がする。
「この土地は、皇帝陛下の直轄地域ですわ」
「……済まん、よく聞こえなかった。誰の直轄だと?」
「ですから、ザイドリッツ・フォン・レーネンカンフ皇帝陛下のですわ」
なるほど、理解できた……情報を隠しているのではなく、一般人は入れない場所だから開示する必要がないわけだ。
「皇帝陛下の……じゃあ、ヒューベルを取りに行くなんて無理だ……」
ウィルはすっかりしょげ返っている。しかし、手がないわけではない。
「オーベルに頼んでみよう。皇帝に話が通ればいいのではないか?」
何と言ってもオーベルは皇帝の実子である。しかもこういう話には乗る性格だ。
「名案と申し上げたいところですが、それでは間に合いませんわ。余程の火急の事態でない限り、ご多忙の陛下への陳情は五日近くかかるはず」
「陳情が通った後、ネルトリングまで馬を使えば何とか間に合わぬか?」
「そもそも陳情が通るかどうかですわ。陛下の直轄地に一般人を入れるとなれば、相応の理由が必要ですから。誕生日の贈り物に花一輪、そのために門を開けたとあっては、今後直轄地の重要性に疑問を持つ者も出るでしょう」
言われてみればその通りだ。そう簡単に一般人を入れられるような場所なら、わざわざ直轄とする理由はない。
「どうして直轄地域になっているのかは、国政にも絡んでまいりますからさすがに申し上げられませんわ。ですが、それなりに理由はあるとお考えください」
「オーベルを介しての陳情が無理となれば、最早手の出しようがないか」
「いいえ、最後の手段がございますわ」
ウィルがぱっと顔を上げた。目の前の巨大な壁に、向こう側の見える穴を見つけたように。
が、その表情はテレーズの答えで凍りつくことになる。
「罪というのは、見つかって初めて罪になる。つまり、見つからなければ――」

テーマ:栗鼠ゲーム - ジャンル:オンラインゲーム

  1. 2008/03/11(火) 20:49:08|
  2. 偽島の裏
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