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今日もいい日

不定期更新な日記だったり定期更新ゲーム『False Island』の日記だったり。 気分次第で更新、今日もいい日。

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Under the heart

「あ痛たた……」
「くっ……」
「アンネローゼさん、大丈夫?」

カレンとアンネローゼが、ぺたんと座り込んで腰に手を当てている。
何秒かの滞空を経て、その後に全身を包んだ鈍い衝撃。
意外にも穴の底は固くなく、お互いに大事はなかったようだ。



「ええ、なんとか。腰を少し打った程度です」
「良かったわ。ところで、おじ様は?」
「落ちる途中までは確かに……」

はっ、と二人同時に何かに思い当たった。
手で触れる底は固い岩盤である。さしものガートルードも掘るのが面倒になったのだろう。
が、二人が座っている場所はそれほど固くない。
そして、周囲より一段高い。
恐る恐る下に目を向ける。

「おじ様!」
「黒風殿!」

カレンが胸の上に。
アンネローゼが腹の上に。
黒風が二人の下で、指の一本さえ動かさず倒れていた。
わたわたとその場を降り、気を失っている黒風を二人が介抱する。
しかし頬を叩き肩を揺すり、名を呼んでも黒風は反応しなかった。

「……頭部だけはかばっています。恐らく落ちた時点では意識はあったかと」
「じゃあ、気絶してるのは私達が上に落ちたから?」
「いかに黒風殿とはいえ、全身を強打したところに人二人です。さすがに衝撃が強すぎたのでしょう」
「でも、呼吸は安定してるわ」
「目に見える外傷や出血もありません。骨折なども見受けられないようです」
「となると、あまり動かさない方がいいわね」
「同感です。今は安静にしているのが一番かと」

結論は現状維持。医療関連の道具がないということもあるが、それらを必要としないほどに患者の肉体は頑健であった。
意識こそ戻っていないが、いずれは目を覚ますだろう。

「それに……」
「ええ」

二人は丸く切り取られた空を見上げた。
そろそろ黒に包まれる時間である。
その空は高く、遠い。

「おじ様をかついでこの穴は登れないもの」
「10メートル以上あるでしょう……申し訳ありません、ガートルードにはよく言って聞かせます」
「私は大丈夫。おじ様もアンネローゼさんも一緒なら、きっとなんとかなるわ」

カレンがその場に座り込み、休息の体勢をとる。
アンネローゼも同様に、カレンの向かいに腰を下ろす。
しばらく、お互いに無言だった。
時折聞こえる風の音、少しずつ暗くなっていく穴の底。
カレンが軽く手を振ると、小さな炎の塊が姿を現す。
ふわりふわりと宙に浮かび、穴の中が明るく照らし出される。
真昼のように、とはいかないまでも充分な光度であった。
不意に、アンネローゼが口を開いた。

「――――カレンさん」

青い目が、じっと見つめている。
カレンもまた、その視線を正面から受け止める。

「私は、一度貴女と話をしてみたかった」
「……ええ、私もよ」
「まず、お礼を言わせてください。貴女が私に下さった手紙――あの手紙のおかげで、私はもう一度立つことができたのです」
「そんな、大した事じゃないわ。あれは私が思ったままに書いただけ……読みづらくなかった?」
「いいえ。とても真っ直ぐに、私の心に届きました」
「……私、余計な事したかもしれないって思ってたわ。アンネローゼさんがすごく落ち込んでるって聞いて、何かできないかと思って書いたけど……」
「とんでもない。あの手紙がなければ、私は未だに泣き続けていたかもしれません」
「そう言ってもらえると、嬉しいわ」

照れたようにカレンが笑い、アンネローゼもぎこちなく微笑んだ。
気恥ずかしさの感じられる微笑だった。

「カレンさんは、黒風殿の若い頃をご存知なのでしたね」
「ええ。と言うより、おじ様が私の子供の頃を知ってるという方が正しいけど」
「羨ましいですね。私が知っているのは、デーツにおられた一年間だけです」
「でも、私はその時のおじ様を知らないわ。どんな感じだったのかしら?」
「気紛れな嵐、とでも申しましょうか。まるで吹かないかと思えば、ありとあらゆる物を巻き込んで吹き荒れる事もありました」

懐かしそうな目をするアンネローゼに対し、カレンははあ、とため息をついている。

「やっぱりそんなだったのね。『もう年だからおとなしくなった』みたいな事を言ってたけど」
「嘘としては程度が低く、冗談としては笑えませんね」
「アンネローゼさんには随分迷惑をかけたんでしょうね、おじ様は」
「……ええ。いくら言っても勝手にどこかへ行ってしまう。私は主から案内役を仰せつかっていたので、気が気ではない事もありました」
「なんだか、聞くのが怖くなってきたけど……何をしてたのかしら」
「私達の館に着いたその晩に強盗を捕らえていました。幽霊騒ぎにも巻き込まれ、さらには皇帝陛下の直轄領へ夜間不法侵入。皇都中の住民を巻き込んで、一晩かけての鬼ごっこ」
「ごめんなさい。やっぱり聞くんじゃなかったわ……」
「挙げていけばキリがありません。一年の間に五年分は苦労をさせられました。ですが」

アンネローゼが静かに顔の向きを変えた。
その先には、大柄な男が壁にもたれている。

「とても、楽しい日々でした」

過去と、今と、未来を同時に見るような、澄んだ瞳だった。

「……アンネローゼさんは、どうしておじ様を……いえ、何でもないわ」
「どのような質問かは、おおよそ見当がつきます。ですが、先に私から伺っても良いですか?」
「……ええ、いいわ」
「カレンさんは、どうして黒風殿を好きになられたのですか?」

火の塊と赤い瞳が、二度瞬いた。

「……私は、普通の人間ではないの。竜人といって、竜の力を持っている――そのおかげで、昔ちょっと辛い事があったの」
「……」
「仲間だった人に、厳しい事を言われて。それ以来、他人との関わりを真っ直ぐに持てなかった……また同じ事を言われたらどうしよう、って」
「でも、黒風殿はそうではなかった」
「ええ。おじ様はああいう人だから……私のそういう部分も、受け入れてくれた。突き放しも、目を背けもしなかった」
「あの方らしいですね。誰もが立ち止まる壁を、そんな物はないかのように越えていく」
「『越えていく』というよりは『壊していく』という方が正しいんじゃないかしら?」

お互いに小さく笑い合い、わずかな沈黙が降りる。
空白の時間に、自らの想いに向き合うように。

「『私』という存在を受け入れて、受け止めてくれた。だから、私はおじ様を好きになったんだと思うわ」
「……ありがとうございます。答えにくい事を聞いてしまいました」
「ふふ。でも、これから私も同じ事を聞くのよ?」
「…………」

再び、沈黙が降りた。
しばし目を閉じたアンネローゼは、穏やかな声で話し始めた。

「お会いしてからしばらくの間、私は黒風殿が嫌いでした」
「えっ!」
「本当です。始めは主に害を為すのではないかと疑っていました。それはすぐに晴れたのですが、やはり好きにはなれなかった。あまりにも私と違いすぎたのです」
「違いすぎた?」
「私は融通の利かない人間です。法と規則、建前と儀礼の中で生きてきました。黒風殿はそれら一切をからかうように、様々な無茶をされる。私では思いつきもしないような、とんでもない事ばかりを」
「……」
「それでも、最後には何とかしてしまう。何とかなってしまうのです。全て計算づくのような、まるで行き当たりばったりのような。振り回されるうちに、私の中でそれを心地良いと感じる部分がいつしか生まれました」

言葉を切り、カレンに目を向ける。
視線が触れ合い、重なり合う。

「その感覚――感情が、恋というものだと気付いたのは……黒風殿が私達の前から去る時でした。恋と呼ぶことに、躊躇っていたのでしょう」
「その時は、何も?」
「ええ、何も。一年間あの方の傍に居続けた私のままで居たかったのです……私が黒風殿を好きになったのは、人を好きになるという事を教えてくださったからです」
「好きになる事を教えてくれたから、好きになった……」
「論理が破綻しているのは承知しています。ですが、そうとしか申し上げられません」
「……私、嬉しかった」

唐突に、カレンが話題を変えた。

「あの日、アンネローゼさんが私達を祝福してくれて、とても嬉しかった」
「そうさせてくださったのは、カレンさんの手紙です」
「本当に……本当に、アンネローゼさんも、おじ様を好きなのね」
「ええ。だからこそ、想う相手と結ばれた貴女を心から祝福できたのです」

炎が小さく揺らめいた。

「人を好きになるという事が、どれほど切なく苦しいか。どれほど優しく暖かいのか。私はそんな事も知らなかった」
「おじ様はきっと、『教えたつもりなどない』って言うわね」
「そうでしょう。そういう方です」
「やっぱり、アンネローゼさんと話せて良かったわ」
「それは私も同じです……カレンさん」
「何かしら?」
「私などが言える事ではありませんが、黒風殿を……よろしくお願いします」
「私が言える事ではないけど、そう言える資格は貴女にしかないわ」

どちらからともなく小さく笑い、それを潮に二人は身を横たえて眠りに就いた。
浮いていた炎はふっと消え、穴の底は小さな寝息ばかりが支配していた。
アンネローゼの戻りが遅いことを心配したグリューネワルト達によって三人が救助されたのは、夜が明けてすぐの事であった。

テーマ:栗鼠ゲーム - ジャンル:オンラインゲーム

  1. 2009/05/07(木) 22:43:15|
  2. 偽島本編
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False IslandのE.No412 Blackwind。
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