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今日もいい日

不定期更新な日記だったり定期更新ゲーム『False Island』の日記だったり。 気分次第で更新、今日もいい日。

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Bless

葉ずれの音に足音を重ねるようにして、男は夜の森の中を進んでいた。
慎重に、だが確かな速度で。
堂々たる体躯でありながら、不要な物音を立てずに。
男の名はシュラ・クサナギ。
カレンの父親であり、黒風と三十年来の付き合いのある戦士。
彼がこうして出歩いているのには理由がある。



娘のカレンは手傷を負い、それに伴う一種の呪いによって動くことのできない状況だ。
カレンが再び襲撃される可能性を考えての、夜間の巡回であった。
通る場所は毎晩変えており、法則性は一切残さない。
襲撃者は人の姿をしていながら人ではなく、妖魔の類に属するもの。
もし目の前に現れたなら、帰しはしない。シュラは剣術もさることながら術士の心得もある。
五体で戦うだけの黒風よりも、講じられる手段は多い。
実際、ただ歩いているだけに見えても、その歩法や呼吸法によって周囲の状況をより広く、またより早く捉えられる術を行使している。
その『網』に、反応があった。
ゆっくりと、確かな足取りで近付いてくる。人数は一人。
腰に差した刀の柄に手をかけ、鯉口を切る。
人影が木の陰から姿を現し、足を止めた。

「お前……いや、あんたは……」



それから数日後の昼間。
一枚の手紙を手に、長身の男が森の中を歩いていた。
時折足を止めては手紙に目を落とし、進む方向を確かめてからまた足を踏み出す。
長身に白髪混じりの長髪、無造作な歩み。
アンネローゼから手紙で呼び出しを受けた黒風である。
カレン襲撃の一件以来会っていなかったが、先日羅喉丸が手紙を預かってきたのだ。
いつどのように知り合ったのか、羅喉丸はガートルードと交流があるらしく、その縁で手紙を託されたらしい。
文面は簡潔であった。

『お呼び立てする非礼は承知なれど、お会いしたく』

その一文以外に書いてあったのは、目的地への道順。
それに従って、黒風はこうしてやってきたのである。
まだ足を踏み入れたことのない地域(と言っても島にはそんな地域はいくらでもあるが)で、似た様な場所も多くなかなかに迷いやすい。
手紙にあった道順は的確で、目印や迷いそうな所を箇条書きにしてあった。
小一時間ほども歩き、最後の目印を過ぎた場所に、アンネローゼは立っていた。
数日振りに会うアンネローゼは少しやつれているように見えたが、その瞳の輝きはいささかも曇りがない。
黒風の姿を認めると、深く静かに頭を下げた。

「この度は、ご迷惑をおかけ致しました」
「いや、卿のせいではあるまい」
「『あれ』は私の弱い心が生んだ存在。非は私にあります……そのお詫びもせぬまま、こうして黒風殿を呼びつけています。許されぬことです」
「……詫びなど不要だ。卿もまた、辛い目に遭った……ところで、この先に何かあるのか?」
「ございます」

アンネローゼは頭を上げ、黒風の眼を正面からじっと見つめて言った。

「私の偽らざる心が」



連れられて行った先には、陽の当たる広場。そこに建っていたのは大きくはない白亜の建造物。
中央の建物の両側に小さな二つの部屋が外付けされている。
そのうちの片方の扉を開いて、アンネローゼが中に入るよう促した。
室内は簡素な造りになっており、奥に据え付けられた卓の上に長持が一つ乗っていた。
全体的に古めかしい中で、その長持だけが新しく、嫌でも目に付いた。

「お召し替えを」
「この長持の中に服があると?」
「はい。私を許され、信じていただけるのならば」
「外で待っていてくれ」

扉が静かに閉められた。
長持の蓋を開けた黒風は、我が目を疑った。



「丈は問題ないようですね。どこか窮屈ではありませんか?」
「いや、そんなことはない。しかしこれは一体何の趣向だ?」

着替え終わって部屋を出、中央の建物の正面にやって来た黒風が着ているのは、しっかりとした設えの燕尾服である。
もちろん上着だけではなく、中のシャツやネクタイも一式揃のものだ。
大きさはともかく、着慣れない服を着ているせいでどうもうまく動けなかった。

「偽らざる心、とのことだが……この服がそうなのか?」
「……この島の市は、様々な物を売っています。食料、武器防具、医薬品、日用品、燕尾服……そして」

アンネローゼが視線を動かした。つられるように、黒風も同じ方に眼を向けた。
自分が着替えた部屋とは反対側にある部屋を。
扉が開き、中から白く長い服を来た女性が現れる。

「花嫁のドレス」

純白の、長いドレス。陽の光の下、まさに輝くばかりに白い。
頬を赤らめ、白に身を包んでいるのはカレンだった。

「……おじ様……」
「カレン、これは……む、お前も来ていたのか」
「いちゃ悪いか?」

カレンの後に続いて現れたのは、誰あろうシュラであった。
手に一つ袋を持っただけの軽装だ。

「そっちのお嬢ちゃんに頼まれてな。いや、ありゃあ殆ど説得みてぇなモンだったが」
「アンネローゼと面識があったのか」
「この前、見回りの最中にな。色々話して、そんでまあこうなった」
「花嫁には、父親が付き添うのが慣例です……黒風殿、こちらへ」

アンネローゼが静かに正面の扉を開け、中に入っていった。
混乱する頭をまとめようと試みながら、黒風もその後に続いていく。
そこは、礼拝堂だった。
大きいとは言えないが、正面には精緻なステンドグラスがあり、眩しさの中で確かな色彩を放っていた。
その下に立ったアンネローゼが、厳かな声で告げる。

「花嫁は、参られ給う」

静かに。
ゆっくりと。
シュラの腕を握りながら、カレンが礼拝堂に歩み入ってきた。
黒風の前で二人が足を止めると、恐る恐る手を放す。
シュラが袋から何かを取り出し、カレンの頭にそっとかぶせた。

「……ニオのやつが羅喉丸に持たせてくれた。昔こいつが作ったモンだ」

白く透けるそれは、円環を基に作られたベール。
その円環に、黒風は見覚えがあった。

「……ダリアクラウンか。粋な計らいをしてくれるものだ」
「ふん……ほれ、前見ろ。俺は花嫁の付き添い、お嬢ちゃんは見届け人だ」
「花嫁、花婿。両名はこれへ」

言を受け、カレンと黒風が前へ出る。自然と二人の腕は組まれていた。

「略式なるをお許し頂きたく。両名、互いを想うその想いに相違は無きか?」
「無い」
「ありません」
「時に、互いの背を守り。時に、互いの隣に立ち。時に、互いに向き合い。寒熱昼夜の別なく、その想いと共にあるべし――異議無くば沈黙を以って答えよ」

礼拝堂の中は、しんと静まり返った。誰も何も言わず、何も誰も動かない。
張り詰めた静寂の中、無音の音――自らの鼓動さえ聞こえるような気がした。
ややあって、アンネローゼが右手を天に掲げた。

「我、アンネローゼ・フォン・ニーダマイヤーが確と見届けた。両名の結ばれたるを認め、これを祝福する」

厳かにはっきりと言い放ち、その場に片膝をついて頭を下げる。

「我が誇りに懸けて誓う、私の偽らざる心。黒風殿、カレン殿――――ご結婚、おめでとうございます」


テーマ:栗鼠ゲーム - ジャンル:オンラインゲーム

  1. 2009/02/22(日) 00:56:29|
  2. 偽島本編
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