上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。

今日もいい日

不定期更新な日記だったり定期更新ゲーム『False Island』の日記だったり。 気分次第で更新、今日もいい日。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

Cry For Love

そろそろ日も沈みきるという時間帯に、黒風殿が私たちの野営地に来られた。
私たちが向こうにお邪魔することも多く、相互の行き来は別に珍しいことではない。
「…………」
しかし、違っていたのは黒風殿の表情だ。
悲しそうで、苦しそうで、辛そうな。
私の知る限り、あのような表情をしている黒風殿は見たことがなかった。



「……一人か?」
「はい。ガートルードとテレーズはまだ戻っておりません」
「そうか……」
しばらくの、間。
お互いに視線を外さず、相手の眼を見つめるばかりだった。
固まりそうな空気を、黒風殿の言葉が切った。
「話が、ある」

話が、ある。
それだけで、私には何のことか分かった。
聞きたくはない。
恐らく――いや間違いなく、黒風殿は私の想いをご存知なのだ。
だから、あれほどに辛そうなのだ。
口の中が渇く。手が震える。胸の鼓動が早まる。
聞きたくはない。
でも――聞かねばならない。

かなりの時間森の中を歩いて、私はようやく求めた場所に辿り着いた。
既に月は登り、あたりはしんと静まっている。
木々に囲まれたここは、月光を照り返す泉。
湖と呼ぶにはやや小さく、その透明度はかなりのもの。晴れた日に水面に船を浮かべれば、底まで見通せるかもしれない。
淵に立って眺めると、微かに水面を揺らす波紋が見える。
以前、島を探索していた折に見つけたきりだったが、妙に心に残っていた場所だ。

留め金を外し、鎧を草むらに置く。二振りの剣と、篭手も。
ブーツを脱ぎ、鎧の下に来ていた服と下着を脱ぎ捨てる。
これで身を覆うものは何もない――いや、あった。
耳元にあるそれに手を伸ばし、そっと触れる。薄桃色に光る、水晶の花。
そして胸元で輝く、青い雪の結晶。
――そういえばこれをいただいた時、私の髪の色に似ていると言ってくださった。
この二つだけは外せない。外したくない。
私は、私を裏切りたくない。

素足をそのまま泉に浸す。
冷たく、澄んだ水だった。
以前来た時はこれほど冷たくはなかった。
熱くなっている私の身体を、静めようとしているのか。
一歩を踏み出すごとに新しく巻き起こった波紋が水面を走り、他の波紋とぶつかり合って消える。
闖入者である私を、泉が受け入れてくれるようだった。
歩を進めるごとに泉は深くなっていく。さっきまで膝下だった水面は、既に私の胸近くにまでなっている。
ふと見下ろすと、先は更なる深み。辛うじて底は見えるが、それは高い透明度の水のおかげだ。
どれほどの深さがあるのかは見当がつかない。
大きく息を吸って身を沈め、一気に潜る。
潜りながら、頭の中は様々な景色に同時に占められている。

狼の群れを打ち倒し、不遜に挨拶したあの人。
朝方に帰ってきて、口では済まんと言いながら悪びれないあの人。
街中で甘い物を目にして足を止めるあの人。

幾つもの情景が思い浮かび、脈絡もなく繋がる。
(――俺は――)

窓辺に立ってコーヒーを飲むあの人。
遊んでいる子供たちを見て、穏やかな顔をするあの人。
馬を駆り、平野を走り抜けるあの人。

その中で、最も新しい記憶が。
(――カレンと――)

私が断れないと知って、無茶な提案をしてくるあの人。
子供にするように、私の頭を撫でたあの人。
黒いマントを羽織り、森の中に消えていったあの人。

全ての思い出の前に立ちはだかる。
(――添い遂げる――)

悲しそうなあの人。
苦しそうなあの人。
辛そうなあの人。

「――――はあっ……」
大きく息を吸う。空気が胸を満たし、また出て行く。
髪の先から落ちる滴が、私の周りに無数の波紋を生み出す。
千々に乱れる私の心のように。
「……うっ……」
不意に、息が詰まった。
ずっと抑え続けてきたものが溢れ出し、耐え続けてきたものが零れ出る。
「うっ……く、うっ……」
止められない。一度出始めてしまった涙も嗚咽も、止めようがない。
「ああ……うあ、くっ……あああ……」
泉の中で膝をつき、私は手で顔を覆った。
悲しく、苦しく、辛い。
なぜあの人は、私を選ばなかったのか。それは言っても詮無きこと。
私が想いを告げていれば、何か違っていたのか。きっと、何も違わない。
例えそうしたとしても、あの人は私を受け入れなかっただろう。
でも、私はそうしなかった。それは事実。
こうなることを恐れていたからだろうか。
想いながら諦めていたからだろうか。
「あああ……う、うああ……っ!」
あの人の性格は多少なりと知っている。
色恋沙汰には疎い私に輪をかけて疎い。だからこそ、私にどう伝えたものか苦しまれたのだろう。

それでも。
それでも、伝えてくれた。
私を傷つけると知りながら。
私を悲しませると知りながら。
『済まない』とも『許せ』とも言わなかった。
まるで罰を受け入れようとする罪人のように、一言の弁解も口にしなかった。
私は、まだ答えていない。
伝えてくれたことに、まだ答えていない。
あの時、様子を察した黒風殿は、目を伏せて私に背を向けた。
そして私は、この場所までやってきたのだ。
答えねばならない。
でも、今はまだできない。
「う、くうっ……!ううっ……!」
頬を、腕を、身体を伝い落ちるこの涙が、全て泉に溶けるまで。
胸を、喉を、身体を震わせるこの嗚咽が、全て夜に消えるまで。

「あああああああああああああっ……!」
月を仰いで、私は叫んだ。
胸の奥、私の深いところにある痛みを吐き出すように。
砕けそうになる自分を繋ぎとめるように。

次にあの二人に会った時、心から祝えるように。

テーマ:栗鼠ゲーム - ジャンル:オンラインゲーム

  1. 2008/11/15(土) 20:13:24|
  2. 偽島本編
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<第63回更新 | ホーム | B The B (Below The Bloom)>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://blackwind13.blog123.fc2.com/tb.php/124-d30bb916
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

黒風

Author:黒風
False IslandのE.No412 Blackwind。
中の人はヘビーメタルと刀を愛する超甘党。

最近の記事

最近のコメント

Blogpet

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。