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今日もいい日

不定期更新な日記だったり定期更新ゲーム『False Island』の日記だったり。 気分次第で更新、今日もいい日。

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B The B (Below The Bloom)

獅子は戸惑っていた。
目の前で泣いているのは、会うたびに自分を追い掛け回していた、人間の小娘。
力を削られ、小さな身体でいることを余儀なくされたとはいえ、抱かせろ撫でさせろと迫られるのは気分がよくない。
大きな声で朗らかに笑い、しつこいぐらいに後をつけられたことも一度や二度ではなかった。
夜の森をふらりと散歩していたところで、遠目から彼女を見つけた。
すぐに引き返せばよかったものを、いつもと違う彼女に興味を持ったのが間違いだった。



観察するうちに、どうやら怯えているらしいということが分かった。
獅子の知る彼女には、およそ似つかわしくない態度。
だが、何が苦手かというのは個人によってまったく違う。意外な人物が意外な物を苦手とするのはままあること。
このまま立ち去ってもいいが、それでは少々面白みに欠ける。
日頃追い掛け回されているお返しに、少しばかり驚かせてやろう――ただそれだけの、ちょっとした悪戯心だった。
ところが、いざ目の前に飛び降りてみればこの有様。
獅子にしてみれば予想外の事態、驚かすでは済まず森も震えよとばかりの大泣きである。
膝を屈して小さな子供のように泣く娘――とにかく、この場をなんとか治めなくてはならない。
ここまで大事にして立ち去れるほど、獅子は非情ではなかった。

すっ、と泣いている娘のそばに近付き、その鼻先をつい、と舐める。
触れるか触れないかというほどの僅かな接触ではあったが、娘には確かに伝わっていた。
泣き声が断続的になり、その眼が獅子の眼を正面から捉える。
まだしゃくりあげてはいるが、それでも落ち着く兆しが見えていた。
獅子が娘の脇に動き、娘を包むようにしてぺたりと座り込む。
娘の嗚咽は、少しずつ小さくなっていった。

「はー……泣いた泣いた。こんだけ泣いたのは久し振りだよ」
目は赤いままだが、既に娘は泣きやんでいる。
寝そべっている獅子に寄りかかり、その頭に手を乗せる。
「びっくりさせてくれるよ。ところであんた、あたしが追っ掛けてるやつの知り合い?」
「いや、本人だ。これが本来の姿だ」
「へえー。立派なもんだ……あれ?」
素早く娘が獅子の正面に回りこむ。
「……喋れんの?」
「うむ。我は永き時を生きてきた霊獣、人語程度を操るのは造作ない……あまり驚いてはいないようだな」
「いやまあ、驚いちゃいるけどさ。人間じゃない友達もいるし、喋る動物がいたら面白そうだなーって思ってたし……いやー、でもホントに会えるとはねえ」
ぺたぺたと獅子の顔に触れ、タテガミを撫でる。
泣いていた時とは別の意味で子供のようだった。
少しの間されるがままだった獅子が、ゆっくりと立ち上がる。
「乗るがいい」
「え、いいの?」
問いはしたが、娘は獅子の返答など待たない。言うが早いか、もう背に跨っている。
獅子が動く。始めはゆっくりと、少しずつ速く。人も馬も追いつけぬ速度に達し、森の中を一本の矢の様に駆け抜ける。
「す、すごいなあんた!」
「落ちぬよう気をつけろ」
森の木々が、一瞬たりと視界にとどまらず後ろに流れていく。
枝も茂みも、まるで獅子の通り道を作っているかのよう。
「目を閉じていろ」
「開けてられないよ!」
あまりの速さに、目が痛い。暗闇の中、耳元で風が唸り続けている。
走り続ける獅子の身体の動きが伝わってくる。
躍動していたその動きが穏やかになり、耳元の風も緩やかになった時、獅子が目を開けろと言った。
その言葉に従った娘は、眼前の光景に一瞬、我を忘れた。
「わあ……」
いつの間にか森を抜けていた。行く手には小高い丘があり、その丘の上にそびえ立つのは一本の大樹。
夜空を背に、無数の桃色の花が咲き誇っている。
小さな星々が、まるで計算し尽くしたかのように花を照らす。
「……綺麗だなあ……」
「驚かせた詫びだ」
「いいトコあるね。うん、素直に嬉しいよ」
娘の賛辞を受けた獅子は一拍の間を置いて、低く唸ってから小さく吼えた。

「……ああ、ここまで来たら大丈夫。後は分かるよ」
「そうか」
獅子の背中から、娘が降りる。
丘の上の大樹からまたしばらく森の中を駆け、獅子が向かっていたのは己が主の親友の天幕。
その近くまで行けば自分の野営地に帰れると言う娘の言葉に従って、獅子はここまで来た。
二人が相対し、その視線が絡まる。
「ガートルード・フォン・ビットフェルト」
「羅喉丸」
お互いに名乗り合い、同時に踵を返して歩き出す。
二人の姿が消える頃には、森はもういつもの静けさを取り戻していた。

テーマ:栗鼠ゲーム - ジャンル:オンラインゲーム

  1. 2008/11/15(土) 20:06:57|
  2. 偽島本編
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