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今日もいい日

不定期更新な日記だったり定期更新ゲーム『False Island』の日記だったり。 気分次第で更新、今日もいい日。

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Nameless Feeling

たかが悪党一匹、どこでどう死のうと知ったことじゃない。
そのうち後ろから刺されるか、袋叩きに遭うかして野垂れ死ぬだろうと思っていた。
生きることに希望など持っていなかったし、かといって死にたかったわけでもない。
自殺することさえ面倒で、全てがどうでもよかった。
酒を飲むのも人を殴るのも死ぬまでの時間潰しでしかなく、乾いてひび割れた心が時折軋むのが苛立たしかった。



悪く生きるのは楽で簡単で、敵もすぐに増える。
だが、生きるのに必死だった頃に鍛えすぎたあまり、なかなか死ねない身体になっていた。
体力も打たれ強さも、気付かないうちに随分と人間離れしていた。
昨日も悪事を働き、今日も悪事を働き、明日も悪事を働く。
ただ、それの繰り返し。そうしたいわけではなく、他に何もやることがなかった。
やりたいことなど、何もなかった。

砂漠の街で過ごした最後の晩、店を閉めてカウンターで酒を飲んでいた俺に、不意にドミニクが話しかけてきた。
「あんたさ。人、殺したことある?」
愚問だ。この街でこそまだ殺していないが、この街で生きているような奴に訊くことじゃない。
「バカにしてんのか?俺が人も殺せないような根性なしだって言いたいのか」
「そうじゃないよ……あるかないかで言ったら、あるのは分かるよ。そういう目、してるからね」
「なら何が言いたい」
「要するに、さ。『殺したくて殺したことある?』って聞いてるの」
「……」
答えに詰まった。確かにこれまで、何人もの命を奪ってきた。だが、例えば快楽的に殺したことはない。
見逃せば後で手痛い仕返しを食う、そう分かっていても殺しきれない方が多かった。
俺の中の何かが、躊躇わせるのだ。そしてその躊躇いに、俺は勝てないのだ。
「そんなこったろうと思ったよ。殺さなきゃあんたが殺される、そんな時にしか殺してないんだろ?」
「……だったらどうだってんだ。理由なんざ関係ない、殺したことがあればそれ以外に言うことなんかねえだろう」
「そうでもないよ……結局さ。あんた、向いてないんだよ」
「何にだ?」
「悪いことに」
あまりにも簡潔すぎる答え。理解するのに、逆に時間がかかった。何を言われたのか分かった瞬間、鼻で笑い飛ばしていた。
「お前バカか。これでも俺の人生振り返れば、一対九以上に悪事の方が多いんだぞ」
「で、それは楽しかった?やりたくてやったことだった?違うはずだよ」
「……」
またしても答えに詰まった。突き詰めるなら、俺だって悪事に身を染めずに生きたかった。
だが、俺は楽な道に堕ちることを選んだ。その結果が今の俺なのだ。
「一端の悪ぶってるくせに、悪い事するのは怖いんだよね。だからどうしようもない時にしか殺せない」
「……だからと言って、悪事に向いてないってわけじゃないだろう。殺しだけが悪事じゃねえんだ」
「楽しくないってことは向いてないってことだよ。殺したくないから強く殴るんでしょ?相手がさっさと諦めてくれるようにさ」
……こいつは。この女は、なぜこうも簡単に俺の心を抉ってくるんだ。
「どうしようもない時にしか殺さなかった。あんたは、そういう免罪符が欲しいんだよ。そうでないと自分が壊れちゃうから。そんなもの欲しがるやつは悪いことに向かないよ」
「……それとこれとは……」
「同じだよ。しょうがなく悪いことしてるけど、凄く悪いことはできるだけ避けてます。だから悪いことしてるのは見逃してください。そう言って許してほしいんでしょ?」
「バカ言ってんじゃねえ、俺は誰にも頭なんか下げねえ……許してもらう相手なんぞいるか」
「バカはあんたの方だよ。そんなこと言ってる自分に許してほしいんだって分かってるくせに」
「……」
言葉に詰まる、なんてもんじゃない。何一つ反論できる言葉が見つからない。
「自分に謝らないとできない、しかもやりたくもないし楽しくもない。どう考えたって向いてるとは思えないよね」
「……」
「あんたがホントに悪人だったら、あたしのこと殺してるはずだよ。結構キツいこと言ってるからね……でもあんたは動けない。自分にはできないって、分かっちゃったから」
「お前……お前は、何でそうも簡単に俺のことが分かる」
「分かるよ」
ドミニクが笑いながら目を伏せて言った。
「そういう目、してるからね」

次の日の朝、大して多くもない荷物をまとめて『キーラーホフ』を出た。
これ以上この街にいたくなかったからだ。
まだあまり人気のない通りを歩き、街に一つだけある門に向かう。
この街に入るため、あるいは出るためにはここを抜けるしかない。
崩れかかった石造りの門の陰に、もう見慣れた砂色の髪の女が立っていた。
「やっぱり出てくんだ」
「いつまでって契約したわけでもねえ。用心棒にもこの街にも飽きた」
嘘だった。心のどこかで、ドミニクの傍にいたいと思う俺がいた。
だが、それを認めることだけはできなかったのだ。
どんなものであれ、他人に対してこれほど大きな感情を持ったことはなかった。
その感情に、恐らく名前などない。
恋だとか愛だとか、そんなものではなかった。
俺の心の亀裂に一滴の水を落としたこの女に全てを委ねてしまいそうになる、そんな感情。
手の施しようがないほど腐っていた俺が今まで見ないようにしていた道を見せられた。
救うでもなく突き放すでもなく。
初めて心に踏み込んできた相手から遠ざかることを、俺は選んだ。
「元気でやんなよ」
「じゃあな」
それだけ言い交わしてすれ違う。
風が吹いて、砂色の長い髪が俺の肩を叩いた。
止まることも振り返ることもせず、俺は歩き続けた。
それきり、ドミニクには会っていない。

何年かして、砂漠の街に住んでいたという男に偶然会った。
俺は男を知らなかったし、男も俺があの街にいたことを知らなかった。
男によれば、俺が街を出てしばらく経ったあたりの時期に、ドミニクも店を閉めたという。
『キーラーホフ』に行ったことはないが、砂色の髪の女主人はそこそこ有名だったから知っていると言っていた。
誰に行き先を告げることもなく、去っていったらしい。

ドミニクに言われたことが直接の原因ではないが、街を出てからはふっつりと悪事に手を染めなくなった。
ある男に鼻っ柱をへし折られ、そいつに何年か引きずり回されたおかげで、そこそこ真っ当な生き方ができるようになったからだ。
だが、もしあの時ドミニクに心を抉られなかったらどうなっていたか。
今こうして生きていることさえなかったかもしれない。
それを思うと、微かにあの時の感情が胸の奥に甦る気がする。
名前のない、あの感情が。

テーマ:栗鼠ゲーム - ジャンル:オンラインゲーム

  1. 2008/10/27(月) 16:20:13|
  2. 偽島本編
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