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不定期更新な日記だったり定期更新ゲーム『False Island』の日記だったり。 気分次第で更新、今日もいい日。

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Blackwind's Police Blotter 6-6 -Spectator & Actor-

日が昇ってからずっと、途切れることなく喧騒が続いている。
時間が経つごとに少しずつその密度は濃くなり、日没が近付くと人の流れは一点に向かい始めた。
目指す先は皇都の東の外れに位置する野外劇場。元の地形を活かして半円の擂鉢上に設計されており、壁側の一部が舞台となっている。
擂鉢の底にあたる部分も一部を段の違う舞台として使うことができる、珍しい構造だ。
半円を形成する斜めの部分は全て観客席となっており、総収容人数は実に五万五千人を誇る。
元の地形が既にこのようになっていたため純粋な意味では建造物とは言えないが、皇都内に限らず皇国全土を見てもこの規模の施設はない。
観客席を埋め尽くした誰も彼もが興奮し、これから起こるかもしれない『何か』に期待している。
たまたま隣り合っただけの見知らぬ者同士が酒を酌み交わし、肩を組んで歌う。
劇場に面した建物の窓は人が乗り出して鈴なりの状態、低い家などは屋根に上っている者さえいる。
集まった者たち全てが、宮殿を背にした舞台をちらちらと見ている。
舞台の正面、観客席の一番下にあたる部分には、特別に設置された天蓋付きの皇族専用の席。
まだその席には誰も座っていないが、周囲を固める騎士の数は例年の比ではない。
広場の周辺を囲むのは警備隊でも選りすぐりの者たち。
皇族の席を護るのは皇国親衛騎士団。
皇国史上屈指の厳戒態勢とも言えるこの場に、『バルバロッサ』と『ブリュンヒルト』は、果たして予告どおりに現れるのか。
この場にいる者は皆、疑いながら信じ、信じながら疑っていた。



「あ、来た来た!こっちです!」
黄色い髪の少年が、手を振りながら声を上げた。
きょろきょろと席を探していた金髪の女性が、それに答えて小走りに近寄る。
「ありがとう。遅くなってしまってごめんなさいね」
「そんなに待ったわけじゃないわよ。でももう劇が始まるっていうのに、どこに行ってたの?」
こちらは金髪をおさげに結んだ少女が口をとがらせる。
「うふふ。それは内緒」
「あの、私もご一緒してて本当によろしいんですか?」
どこか小動物を連想させるおかっぱの少女が、おずおずと声を上げた。
「遠慮することはないわ。こういうのは、大勢で観る方が楽しいものよ」
そう言って席に座ると、他の者に聞こえないように小さく呟いた。
「『大勢』で観る方が、ね」
実に楽しそうな秘密めいた微笑を浮かべた。

赤毛の女性騎士は、人の群れの外から劇場を見回していた。
組んだ腕に愛用の斧槍を携え、無数の人の中に異状を感じさせる者がいないかどうか気を張っているのだ。
と、突然誰かが鎧を引っ張った。強い力ではない、どちらかと言えば掴んだだけのような。
素早くそちらを向くと、小さな手が鎧の端を握り締めていた。
「お父さんとお母さんが、いないの……」
桃色の玉の髪留めをつけた、十歳にも満たないであろう少女だった。一頻り泣いた後らしく、鼻を赤くして時折しゃくりあげている。
女性騎士は即座に膝を屈めると、少女の手を取って言った。
「じゃあ、あたしが一緒に探してやるよ」
近くにいた別の騎士に事情を説明し、少女の手を引いた女性騎士は人波に消えていった。

急ごしらえの天幕の中、鎧に身を固めた一団の中心で、金色の巻き毛の女性が市街地図を睨んでいる。
「一番隊から四番隊までの配置はこれで問題ないね。七と八もよし……やっぱり十番隊の箇所が薄い。両隣の九と十一から応援を回して」
指示を受けた騎士が天幕を出て行く。
「カストロプ地区の動きが気になるな……やけに出入りを繰り返してる。これさえなければ十番隊の人員も確保できたんだけどな」
「それについては今連絡があった」
クセのある青い髪を揺らしながら入ってきた女性。丸い眼鏡の奥の瞳が、静かな光をたたえている。
「どうやら頭領が姿を消したらしい。それに付随した何らかの陽動なのか、それとも本当に混乱しているのかは不明だが」
「頭領が?まったくあの小娘、この忙しい時に余計なことしてくれるなあ」
「個人的に少し調べてみたいことがある。私は一度抜けるぞ」
「ええ?困るなあ、ただでさえ人手不足なのに……」
「特務部隊は預ける。そちらに従うよう通達済みだ」
踵を返し、返事を待たずに天幕を出て行く。
残された女性が、やれやれといった風に肩をすくめた。

眼鏡をかけ、艶やかな黒髪をきっちりと纏めた女性が、ツカツカと速い歩調で歩いていく。
足は止めぬまま周囲に目を配り、観客席の状況を冷静に観察している。
「……やはり、出るとすればあそこしかありませんか……あまり派手なのは好みませんが」
独り言を言いながら、黒髪の女性は劇場の周囲を歩き続けていた。

二人の修道女が、劇場の中をあっちに行きこっちに戻りを繰り返している。
片方は先ほどから文句を言い続けており、もう一人はそれをたしなめてばかりだ。
「ちょっとさー、いくら何でも人多すぎるぜ」
「分かりきったことを言わないで。もうすぐに開演なのよ?」
「へいへい。院長とチビどもは?」
「いつもと同じよ。福祉院の用意してくれた特別席」
「そっか。あそこはいいよな、近くも遠くもなくて舞台がよく見える」
「問題は私たちよ。このままじゃ間に合わないわ」
「もう疲れたから帰ろうぜ……いやいや嘘。冗談だって」
物理的な圧力さえ感じる強烈な視線を受けて、ようやく口を閉じる。
その後も二人は、劇場の中をあっちに行きこっちに戻りを繰り返していた。

劇場からやや離れた所に建つ教会の尖塔に、一人の娘が佇んでいる。
高所ゆえの強い風にあおられ、銀色の髪がなびく。
「さすがだな。随分と囲んだものだ」
その視線は劇場に、正確には劇場を警備する騎士たちに注がれている。
「御用提灯十重二十重か。どうするつもりか知らぬが、久し振りに面白そうだ……期待しているぞ?」
誰にともなく激励の言葉を飛ばし、娘は尖塔の中に姿を消した。

劇場の喧騒を聞きながら、長身の男が呟いた。
「声が落ち着いてきた。ぼつぼつ始まるようだな」
刻一刻と近付く舞台の開演に合わせるように、少しずつ群集のどよめきが治まってきていた。
「私もそろそろ参ります。また後ほど」
「うむ」
肩ほどまである青い髪の女性が男に声をかけ、足音も立てずにその場を離れていく。
「……これで何も出てこなかった日には、追い出されるだけでは済まんだろうな」
独り言が誰にも聞こえなかったのを確かめると、男は煙草に火を着けた。

興奮をそのままに小さくなっていく喧騒の中、大勢の騎士に囲まれた者たちが現れる。
あらかじめ決められたとおりに、舞台正面の特別席に上る。
中央から左に二つ目の席には、鷲の意匠を施した銀の杖を持つ青年が座った。
目だけを動かして舞台の周囲をさっと見回す。
「これほど心躍るのは、いつ以来だろうか……」
何かに満足したように、手の中の杖を弄びながら呟く。
「やはり祭りというのは、こうでなくては」
微笑むと、もう動くことはないと言わんばかりに椅子に深く腰掛け直した。

日は沈んだ。夕暮れを過ぎ、既に夜が降り始めている。
上り始めた月から注がれる冷たい光も、群集に満ちる熱気を冷ますことはできない。
じっとしていても汗を感じるほどの暑さの中。
観客席の端で落とした針の音が、反対側の端で聞き取れそうな静寂の中。

皇都夏祝祭の最後を飾る舞台の幕が、上がった。

テーマ:栗鼠ゲーム - ジャンル:オンラインゲーム

  1. 2008/09/13(土) 20:19:09|
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